【アナハイム(米カリフォルニア州)16日(日本時間17日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(28)が、メジャー5年目のシーズン前半戦を終えた。「2番DH」で出場したドジャース戦では4打数2安打。3試合ぶりのマルチ安打で締めた。ここまで投手では15試合の登板で9勝4敗、防御率2・38の成績を残し、打者では打率2割5分8厘、19本塁打、56打点、10盗塁。「投手」「打者」「コンディション」の3点から、担当記者が前半戦のパフォーマンスを総括する。

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<投手>

投手では進化が数字で表れた。直球の平均球速は97・2マイル(約156キロ)で、昨年から1・6マイル(約2・5キロ)アップした。球威だけでなく、各球種の制球力も安定。故障明けだった昨年のシーズン前半は、メカニック(投球動作)の再現性に課題があり、9イニング当たりの四球数は4・7だったが、今季は2・3と大幅に改善されている。

腕を思いっきり振り、探り探りで登板を重ねていた昨年とは歴然の差がある。大谷自身も「体に不安がなく、しっかり1球1球投げられているのが、調子うんぬんより、そこが一番大きい」と話していた。時には肘を下げて腕を振る角度を変え、走者がいない時でもクイック投法でタイミングをずらす。スライダー、スプリット、カーブの変化量を自在にコントロールし、配球にバリエーションを加える。メジャー自己最多の13奪三振、日本人最多タイの4試合連続2ケタ奪三振、前半戦で9勝。万全の状態に投球レベルの進化が加われば、必然の結果だった。

 

<打者>

打者ではスロースタートとなった。4月は思うように調子が上がらない状態で打率2割4分7厘、4本塁打、11打点。開幕から本塁打を量産していた昨季と比べれば物足りなさはあったが、打球速度は自身最速の119・1マイル(約192キロ)をマークした。5月は徐々に本塁打が増え始め、初の満塁弾など7本塁打。持ち味の中堅から左方向の打撃が戻ってきた6月は打率2割9分8厘と確実性が増し、6本塁打を放った。

昨季はシーズン前半で33本塁打。初のオールスター戦に二刀流で出場し、ホームランダービーにも参加した。だが、後半戦は13本塁打と失速。勢いを維持することが出来なかった。打撃では前後半で明暗がくっきり分かれた昨年。今季は、他球団の徹底マークを受けながら徐々に調子を上げ、コンスタントに本塁打も積み重ねている。「必ず(好不調の)波はある。その波を小さくすることが大事」とテーマを掲げていた打者大谷。後半戦でピークを迎える可能性は十分にある。

 

<コンディション>

5月上旬、股関節の張りで登板が1日先延ばしになったことはあったが、それ以外はローテーション通りに先発を重ねた。3月中旬のキャンプイン時、「いい活躍を長く続けるということが一番大事なこと」と語った。メジャーで初めて二刀流でシーズン完走した昨年。その継続が、今季のテーマの1つでもあった。

降板後もDHで出場が可能な「大谷ルール」が新たに導入され、ナ・リーグには今季からDH制が採用された。交流戦でも打者でフル出場が可能となり、前半戦で328打席だった昨年から、今季は382打席と大幅に増加した。負担は確実に増えたが、チーム休養日は睡眠で体力の回復に努め、登板間の調整も柔軟に変えた。ネビン監督代行は繰り返し、「自分の体のことをよく理解している」と評価。大きな故障なく、昨年以上に投打でフル稼働した前半戦。継続した二刀流のコンディション作りが、最も称賛すべき点と言える。

 

○…大谷はドジャース戦前に外野の守備練習を行った。投手調整で壁あてやキャッチボールを終えたあと、コーチからのノックやフリー打撃の打球処理などで約20分、汗を流した。中堅から右翼に回り、ゴロの捕球も行った。今季はまだ機会がないが、昨年は7試合、外野の守備についている。

○…大谷は前半戦の最終戦では4打数2安打も、チームは完敗し、今季最大の借金14となった。19日(日本時間20日)のオールスター戦には前回登板から中5日で投打の二刀流で出場する予定。その後、中2日でシーズン後半戦の初戦、22日(同23日)のブレーブス戦に先発することが決まった。ネビン監督代行は「彼を信頼しているし、体を管理してしっかり準備するだろう。金曜日(22日)の登板を楽しみにしている」と話した。次回登板では、1918年のベーブ・ルース以来、104年ぶりのシーズン2ケタ勝利&2ケタ本塁打の達成も期待される。