日本ハムのドラフト1位ルーキー、有原航平投手(22)が鮮烈デビューを飾った。オリックス10回戦でプロ初登板初先発。6回4安打2失点でパ新人投手一番乗りとなる初勝利を挙げた。1回に先制を許したものの、2回以降は最速151キロの直球に多彩な変化球を交え、立ち直った。6回に1発を浴び、この回で降板したが、その裏に味方打線が3点を奪って逆転。白星が転がり込む強運も発揮した。

 祈りが通じた。有原がベンチを駆けだし、左翼席を見上げた。6回。レアードの一打はプロ初登板初勝利につながる、放物線が描かれた。「本当に、素直にうれしかった」。両手をたたき、両拳を突き出した。6回4安打2失点。「最後の打者を打ち取ったとき、すごいホッとしてうれしかったです」。お立ち台でポーカーフェースを崩してはにかんだ。

 真価を発揮した。1回に最速151キロを計測も失点。未体験の緊張感に襲われた。「いつも通りと自分に言い聞かせて、投げた」。2回には山崎勝に大きく抜けたフォークが直撃し、怒声を浴びた。帽子を取り頭を下げ「しっかり気持ちを切り替えていきました」。新人離れした心と多彩な変化球でピンチは1回のみ。6回にソロを浴びたが、揺らぐことなく勝利へ突き進んだ。

 不安な船出だった。1月の新人合同自主トレ。ふと、周囲のトレーナーにこぼした。「今年1年、不安なく投げられるか分からない」。広陵3年時から抱えていた右肘痛。早大時代は投球練習でも50球以上を投げたことがなかった。昨年12月末にノースローを解禁したばかりの自分に、明るい未来が想像できなかった。

 2月の春季キャンプで、光を見た。昨年11月以来のブルペン。捕手を立たせてながら「痛みを感じることなく投げられた」と安心材料を得た。再発を防ぐため、キャンプ中盤から投球時の体重移動の改善に取り組んだ。右肘痛からの解放は、あの夏の日からの願いでもあった。

 広陵3年の10年夏の甲子園。右肘の違和感で県予選から登板を回避し続けた。聖光学院(福島)戦で満を持して登板。有原の暴投振り逃げが決勝点になり敗れた。あの悔しさを、涙を晴らしたい無念があった。

 有原 投げられない時期もあったんですけど、たくさんの人に支えられた。これからも感謝の気持ちを持って投げていきたい。

 力強く、新たな野球人生の幕を開けた。【田中彩友美】

 ▼有原がデビュー戦で勝利。ルーキーがプロ初登板で勝利は今季の巨人高木勇以来で、日本ハムでは11年4月17日ロッテ戦の斎藤以来。ドラフト制後、初登板初勝利の新人は80人目で、球団別の人数は日14人、ソ10人、ヤ8人、中7人、広7人、巨5人、D5人、ロ5人、近5人、神4人、西4人、楽4人、オ2人。日本ハムが最も多い(ドラフト制以前を含めると日本ハムは21人)。