阪神キラーの中日ダヤン・ビシエド外野手(27)が、来日初サヨナラ弾となる6号2ランを放った。延長10回無死一塁、右翼ポールを直撃する劇的な1発は、早くも阪神戦6試合目で5本目のアーチ。9回に追いつかれた一戦にけりをつけ、同一カード3連勝を決めた。主砲の活躍で貯金2とし、広島と並び2位に浮上した。

 ビシエドがナゴヤドームを一気に沸かせた。打った瞬間、手に残る感触に自信があった。右翼へ高々と打ち上がった打球はポールに直撃。ゆっくり走りだし、味方ベンチを指さした。

 「みんなで楽しみたかった。何をやっても許されるかと思って。最高の瞬間だったので」

 2日連続サヨナラ勝利の立役者になった。9回に逃げ切りに失敗して迎えた延長10回無死一塁。阪神6番手福原の外角140キロ直球を捉えた。「切れないでくれ、切れないでくれと思っていた。うまく本塁打になってくれた」。メジャー時代の14年以来、日本球界では初めてのサヨナラ弾となった。

 豪快なスイングとは裏腹に、繊細さも併せ持つ。全く同じ型、重さに削ったバットでも、持った瞬間に数ミリ単位の違いを手のひらで感じ取る。「ここがちょっと太い」と指摘し、熟練したバット職人も「苦労するんだ」とてこずるほど。磨き尽くされた打撃技術だ。そんな姿に仲間も一目置く。先輩助っ人のナニータは「よく野球の話をする。積極的でエネルギッシュなスイングを見習っている」と7歳年下の大砲を尊敬している。

 失策やバント失敗など、精彩を欠く試合運びだった。味方のミスもまとめて帳消しにする1発に谷繁監督も「今日は野手全員がビシエドに助けられた試合だった」とたたえた。阪神戦は6試合で5本塁打。阪神バッテリーは変化球を多用し、両コーナーを攻めてきたが関係なかった。「もっと練習して阪神戦以外でも打てるようにします」。試行錯誤しても、ビシエドはその上をいく。【宮崎えり子】