オリックス金子千尋投手(32)が今季6度目の登板で初勝利を挙げた。特別イベント「Bsオリ達デー」でブルーのチェック柄ユニホームを着て力投。楽天打線に三塁を踏ませず、無四球で2年ぶりとなる通算20度目の完封だ。最下位のチームは主に金子が投げていた土曜日に初勝利。3連敗を止めリーグ最遅で10勝目に到達した。

 やっと、金子に笑顔が戻った。最後はウィーラーを見逃し三振に打ち取り、2試合ぶりにバッテリー復活した伊藤とハイタッチを交わした。男性ファン向けイベント「オリ達デー」。スタンドからは「お帰り!」と声も飛んだ。そう、本来のエースが帰ってきた。

 「僕が投げた試合で今年初めて勝った。それが何よりうれしい。ここまで勝てないのは経験したことなかった」。開幕5戦未勝利は先発に定着した08年以降初。249日ぶり勝利は無四球完封と最高の形だった。

 前回4月23日ロッテ戦から感触をつかんでいたという直球を軸に投げ込み、ペースを握った。「とにかくストライクゾーンで勝負しようと思っていた」。16のフライアウトは押し込んだ証拠。通算23勝4敗と得意だった楽天戦で復活した。

 勝てない期間は悩んだ。登板日以外にはブルペンに入らない特有の調整パターンを変え、珍しくブルペンで腕を振る日もあった。現実から逃げ出したくもなった。「考えたくなかった。でも考えないとダメなので…。弱気になったりもした」。きわどい球を求めてボール球になり、四球を増やす悪循環。過去の投球を見つめ直し、ふと気づいた。

 「語弊があるかもしれないが、今までは上から目線で、変化球で遊んで、打者を惑わしながらやっていたなあと。今日はそういう余裕を持てた」

 ディクソン、東明、西に続いて先発4本柱に勝ち星がついた。「終わった瞬間はホッとしたが、迷惑をかけた。これからやり返さないといけない。1つも負けないつもりでやる」。4月を締めたエースが、反攻を宣言した。【大池和幸】

 ▼金子が通算20度目の完封で今季初勝利。現役で20完封以上は三浦(DeNA)23度、杉内(巨人)21度に次いで3人目だ。これで楽天戦は通算24勝4敗となったが、そのうち10勝が完封。同一カードで10完封以上は山本昌(中日)の広島戦(00年に10度目で通算10度)以来で、パ・リーグでは山田(阪急)が南海戦で83年に10度目、通算11度記録して以来になる。