諦めない。約1カ月ぶりに先発した楽天釜田佳直投手(22)が、6回無失点の好投で首位日本ハムを下した。敗れればCSが完全消滅する一戦で、最速151キロを計測するなど初回から気迫の投球を展開。ルーキーイヤーの12年に並ぶ7勝目を挙げ、松井裕樹投手(20)の2年連続30セーブも呼び込んだ。シーズンは残り10試合。最後まで戦い抜く。

 浮き沈みを乗り越えた分だけ思い出深い7勝目になった。後輩の松井裕が試合を締めくくった瞬間、釜田の喜びがあふれた。「ずっと、1年目の7勝に並んで、超えたかったんです」。首位日本ハム相手に、力の投球で6回2安打無失点。最速151キロの直球で詰まらせ、8三振を奪い、6回1死満塁のピンチもゼロで切り抜けた。「気持ちで投げることができた。真っすぐで押せた」。この試合にかける気迫が表れた。

 14年にトミー・ジョン手術を受けた右肘には今も縫合の痕が残る。プロ生活は5年目でも、ルーキーイヤーの12年以外は先発として十分に稼働することができなかった後悔がある。「もう大卒ルーキーと同じ年齢になった。いつまでも高卒1年目の自分を超えられないようではダメ」。昨年8月に716日ぶりの勝利も、復帰を祝う周囲をよそに「まだ完全復活とはいえない」と平静を貫いた。誰もが納得する結果を残すまで、自分を許せなかった。

 開幕ローテをつかんだ今季にかけていた。新球カットボールに挑戦し、乱視対策でナイター、ドーム球場ではゴーグルを着用。やれることは何でもやった。4敗目を喫した8月10日の直後、右肘の張りで可動域が狭まり出場選手登録を抹消。それでも復帰登板の機会を信じ、2軍でコンディション調整に全力を注ぎ込んできた。「また1軍に戻って、絶対に投げてやるんだと思って過ごしてきました」。約1カ月ぶりの先発マウンドに全てを置いてきた。93球に思いを込めた。

 梨田監督は「球に力があった。この投球なら次にもう1試合投げてもらう」と、自己最多の8勝目がかかる先発機会を予告。釜田は「次へのモチベーションになる。8勝目を挙げたい」と誓った。4年前の自分を超え、完全復活のマウンドにする。【松本岳志】