プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月6日付紙面を振り返ります。2005年の5面(東京版)は巨人が高校生ドラフトで4巡目指名した福井優也投手(現広島)の入団辞退を伝えています。

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 原巨人に衝撃が走った。高校生ドラフト(10月3日)で4巡目指名した福井優也投手(17=愛媛・済美)が5日、仮契約を辞退したと学校側を通じて異例の文書を報道各社に配布した。7日に仮契約する予定だった。福井投手は昨年のセンバツで優勝、夏は準優勝の本格派右腕。巨人はこの日、福井の意志を受け入れ、入団の辞退を了承した。巨人がドラフト指名して入団を拒否されたのは80年4位の瀬戸山満年捕手(中京)以来25年ぶり。18日の大学・社会人ドラフトも控えており、チームや球団に大きな衝撃を与えた。

 まさかの入団拒否。仮契約を目前にして衝撃的な出来事が発覚した。この日、午後5時前に済美高サイドから、父親の署名で異例の文書が届いた。

 文面には、甲子園10勝の実績(実際は04年春4勝、夏4勝、05年夏1勝の9勝)に反して、4巡目という低評価の落胆ぶりがにじみ出る内容。10月3日の高校生ドラフトで指名された際は西武涌井との対戦を望むコメントも寄せていたが、この1カ月で気持ちの変化が起きていた。

 4日には同じ高校生右腕の3巡目加登脇卓真投手(18=北照)が契約金5000万円、年俸540万円(いずれも推定)で仮契約を済ませていた。福井も7日に仮契約を終えるはずだった。事態は急変し、この日巨人は担当スカウトが愛媛・松山市内の同校を訪れ、福井投手と家族、学校関係者と会談。スカウト陣も翻意は難しいと判断した。

 異例の事態に巨人サイドには衝撃が走った。あるスカウトは、拒否を伝え聞くと「びっくりした。血圧が上がったよ」と話した。スカウトとしては入団拒否となれば、事前の調査不足を指摘されても仕方がない。25年ぶりの巨人入り拒否に、清武球団代表は「担当スカウトが家族を通じて本人の意思を確認しましたが、翻意は難しいという判断だったので契約辞退を了承しました。期待していただけに大変残念ですが、まだ若いし能力もあるので、プロを目指して頑張ってほしい」とコメントを発表した。

 福井投手は今後、進学または首都圏の社会人チームで野球を続けることを希望している。東京6大学進学を希望し、1度はスポーツ推薦の話があった早大を一般入試で受験する意向もあるという。取材に応じた父親の俊治さんは「本人は将来、逆指名もしくは、ドラフト上位指名されるくらいまで頑張りたいと言っていた。その考えを尊重する」と話した。

 V奪回へ、秋季キャンプで若手中心に激しい練習をしているだけに、原巨人にはショッキングな事態が舞い込んだ日となった。

◆ドラフト入団拒否メモ

 ドラフト指名選手の入団拒否は、00年の内海哲也投手(敦賀気比)と開田博勝外野手(三菱重工長崎)以来。2人ともオリックスに指名された選手で、内海は1位、開田は5位指名だった。

 巨人の指名を拒否したのは、80年4位の瀬戸山満年捕手(中京)以来、25年ぶりになる(瀬戸山は社会人のプリンスホテル入り)。過去に巨人拒否は第1回の65年から延べ33人おり、73年は指名7人のうち1位小林秀一投手(愛知学院大)2位黒坂幸夫投手(糸魚川商工)3位中村裕二捕手(住友金属)5位尾西和夫投手(新日鉄堺)の4人が拒否。山本昌樹投手は鳥取西時代の71年、松下電器時代の72年と、唯一巨人の指名を2度拒否している。

 なお、巨人拒否後に他球団へ入団した選手には神部年男投手、楠城徹捕手ら過去11人いる。

※記録と表記は当時のもの