プロ野球界の後輩のためにも大事な社会人デビューとなる。ソフトバンク08年ドラフト1位の巽真悟投手(29)はエイジェックという会社に就職し、人材派遣の仕事を行う。

 「和歌山の田舎者があこがれの東京で頑張ってきますよ」。1月中旬、30歳になった巽の新生活が始まる。東京丸の内のオフィスとロッテの本拠地ZOZOマリンがその舞台となる。同社の派遣登録する人の面接をしたり、球場でチケットもぎりのバイトなどに指示を出す役目もする。

 家賃10万円を切る都内の1Kアパートで再出発。車もやめ電車で通勤する。「福岡でも電車乗ったことないのに、東京は乗り換えも大変ですよね」。これまで野球一筋。社会へ飛び出す不安は大きい。個人契約をしていたメンタルトレーナーからエイジェックを紹介された。プロアスリートのセカンドキャリアに今後力を入れたい同社が巽を第1号、モデルケースとして指名した。「来年のオフまでの1年間にこれくらい巽は成長したと言われないと」。巽が頑張ることで、来年以降プロ野球界から去る若者の受け皿も広がる。

 「トライアウトでしっかり投げられたが話がなかったので」と、現役引退を決意した。今季は2軍で中継ぎとして38試合、防御率2・72。結果を出しても1軍登板はなかった。最後の望みをかけたトライアウトでは最速148キロをマーク。だが11球団から声はかからず、12日に入社の意思を伝えた。

 エイジェックは来季からBCリーグに参入する栃木の親会社でもある。だが、巽はそこには関わらず会社員として働く。プロ8年間でわずか1勝。昨年8月11日オリックス戦、柳田のサヨナラ3ランで決まったため「ウイニングボールは手元にないんですよ」と笑う。08年ドラフト1位右腕は来年、スーツ姿で千葉遠征に来たホークスナインを迎える。【石橋隆雄】

 ◆巽真悟(たつみ・しんご)1987年(昭62)1月10日、和歌山県生まれ。新宮から近大を経て08年ドラフト1位でソフトバンク入団。プロ通算24試合1勝4敗、54回を投げ防御率は7・50。16年の年俸は850万円(金額は推定)。182センチ、79キロ。右投げ左打ち。【ソフトバンク担当=石橋隆雄】