青色のスケジュール帳が手放せない。09年ドラフト1位で阪神に入団した二神一人投手(29)は、今オフから同球団の広報に転身した。球団からは10月上旬にフロント入りを打診され、下旬に広報になることが正式に決定。選手との打ち合わせやスケジュール管理、取材現場では忙しそうにその場を仕切る。今は覚えることばかりだ。

 「みんなにある話ではないので、本当にありがたいと思った。ただ、広報は想像もしていなかった。広報というのを伝えられて、ビックリした」

 プロ7年間の通算成績は27試合に登板して0勝3敗、防御率5・31。将来のエース候補として期待されながらも、結果を残すことができなかった。ここ数年は「戦力外」も覚悟。「野球を生かせれば」と、ぼんやりと第2の人生も考え始めた。そんな二神に用意されたポストは球団とメディアをつなぐパイプ役。球団は真面目できめ細やかな性格を見抜いていた。

 幻のプロ1勝がある。14年5月6日の中日戦(ナゴヤドーム)に同点の延長10回から6番手で登板した。1回2/3を抑えて、左腕高宮にスイッチ。延長12回に梅野の2ランで勝ち越し、最後は呉昇桓が1回無失点で勝利した。ドーム内には「勝利投手、二神」のアナウンスが流れた。「ガミ! 初勝利やろ!」と喜んでくれた福原(現育成コーチ)。本当の勝利投手は高宮だったが、今となればいい思い出。あの日のチームの一体感が忘れられない。

 「選手との距離感、マスコミの方との距離感が偏らないようにと思っています。選手にはみんな頑張ってほしいですけど、やっぱり同世代の選手には頑張ってほしい」

 勝利のために、裏方としてチームを支える。二神広報の顔は充実感に満ちている。【阪神担当=桝井聡】