大リーグのスター、マニー・ラミレスの高知入団に沸く独立リーグは、他にも新たな潮流がある。今年からBCリーグに参戦する新球団「滋賀ユナイテッドBC」の発足だ。鈴木信哉社長(36)は「みんなの誇りになって、愛してもらえるチームにしたい」と話す。

 イメージカラーは黒だ。「滋賀県=琵琶湖」の印象が強いが、これを覆そうと甲賀の忍者になぞらえた。同社長は「若いメンバーで世の中を変えていきたい。子どもたちの夢だったり、NPBへの道を作りたい」と意気込む。滋賀県史上初のプロ野球チームは試行錯誤しながら前に進む。琵琶湖が横たわるため、一体感が生まれにくい地域性があるという。だから、本拠地を設けず、琵琶湖を巡る形で守山市民球場や湖東スタジアム、甲賀スタジアム、皇子山球場や今津、彦根の6会場で試合する方針だ。

 所属選手は20人を超え、2月1日から始動する。07年の新人王に輝いた上園啓史監督(32)と桜井広大打撃コーチ(33)の元阪神コンビがタッグを組み、チームのかじ取りを託された。上園監督は15年に楽天を戦力外になった後、オーストラリアのウインターリーグでプレーし、昨季はオランダプロリーグへ。巡り巡って滋賀の監督に就任した。

 新人指揮官で、采配を振るのはもちろん初めてだ。「全部、自分で考えてできるか」と苦笑いするが、前向きにとらえる。選手に伝えたいことがある。「いまの時点では他人に負けているかもしれないけど人はどのタイミングで成長するか分からない。伸びる時期は人によって違う。チャンスはあると思う」。中央球界ではない武蔵大からプロ入りした自負がにじんだ。

 おぼろげながらも、理想のリーダー像を描く。昨年11月下旬に大阪で行われた阪神OB会に出席したときだ。楽天での監督だった星野仙一氏(現楽天副会長)に報告すると「お前が監督か! 頑張れよ」とエールを送られた。現役時に見たことがない表情だったという。上園監督は振り返る。

 「初めてに近いくらい、優しく笑顔で話していただいた。グラウンドでは心を鬼にする。覚悟を持ってやっておられたのだと、あの笑顔を見て思いました。誰しも心に強弱はある。グラウンドは戦うところじゃないとダメだと思います」

 闘将が見せた「仏と鬼」は勝利と育成を追い求める新人指揮官にとって貴重な道しるべになった。「やるからには勝ちたい。日に日に、どうやったら勝てるか考えて過ごすことが増えています」。闘志全開のマウンドさばきさながらに人生の新たなステージに臨む。【酒井俊作】

 ◆酒井俊作(さかい・しゅんさく)1979年(昭54)、鹿児島県生まれの京都市育ち。早大大学院から03年に入社し、阪神担当で2度の優勝を見届ける。広島担当3年間をへて再び虎番へ。昨年11月から遊軍。今年でプロ野球取材15年目に入る。趣味は韓流ドラマ、温泉巡り。

 ◆ツイッターのアカウントは@shunsakai89