三塁側ベンチに戻ると、すぐさま「次も絶対いきます」と言った。同点の9回から登板した楽天松井裕樹投手(21)は、与田投手コーチにイニングまたぎを志願した。得点が動かないまま迎えた延長10回も、当然のようにマウンドへ向かった。2死から四球を与えたが、簡単には動じなかった。最後は西野を高め137キロ直球で空振り三振。2イニングを無安打無失点で切り抜け、開幕戦白星を呼び込んだ。

 昨秋から、イニングまたぎを意識した。「普段からブルペンでもそれをイメージして調整している。問題なかった」。チーム内での役割は試合を締める守護神だが、「自分が何とか抑えたい」という責任感が、そうさせた。梨田監督は「こういう試合を取れたのは大きい。1つにまとまる」と賛辞を贈った。

 世界との戦いで、一皮むけた。松井裕は「オランダ戦が、今までの野球人生で一番緊張した。日本シリーズとか投げていないので分からないですけど、それ以上ではない」。3月12日に行われたWBC2次ラウンド・オランダ戦を振り返った。1点リードの7回から登板し、無安打無失点と切り抜けた。打者3人との対戦でも、負けられない戦いで投げる緊迫感は想像以上。それを味わったからこそ、リラックス出来ていた。

 WBCからチームに合流し、調整登板なしで挑んだ開幕戦。気合満点の投球で、勝利をアシストした。「(開幕)初戦から2イニングでしたけど、勝てて良かった」。たくましくなった若き侍が、今年の楽天を支える。【栗田尚樹】