楽天美馬学投手(30)が、雪辱を果たした。「日本生命セ・パ交流戦」中日戦(ナゴヤドーム)に先発し、8回6安打無失点の快投で今季6勝目をマークした。ナゴヤドームでは過去3試合に登板し、0勝1敗と未勝利だった。前夜には名古屋名物・名古屋コーチンを食し、見事に鬼門突破を果たした。

 目の前で行われる花束贈呈に目を背けた。耳をつんざく観客の拍手にも、心を無にした。美馬は「セレモニーの時間が長かったおかげで、冷静になれた」と振り返った。1点リードの4回1死走者なし、荒木に通算2000安打となる右前打を許した。ドッと盛り上がるナゴヤドームの中で、フーッと息を吐き、気持ちを入れ替えた。

 4点リードの6回1死から京田に右中間へ三塁打を許し、再び荒木を迎えた。中日ファンの地響きのような声援が球場にこだまする。それでも、美馬は冷静だった。低め143キロ直球で二ゴロに片付け、大声援を落胆のため息へ変えた。3回まで毎回、3者凡退に抑えるなど序盤から完全に主導権を握った。与田投手コーチも「左右のコースに投げ分けて、緩急をうまく使えていた」と8回6安打無失点の好投に目を細めた。球が浮き始め、球数も113球を費やしたため、今季初完封こそ逃したが、危なげない投球で6勝目をマークした。「ここで初めてですよね。ようやくでしたね」とナゴヤドームでの初勝利をかみしめた。

 鬼門の地だった。過去2試合の先発では、試合を作れなかった。14年6月7日は4回7安打5失点で黒星を喫した。13年5月17日も6回6安打2失点と結果を残せなかった。ルーキー時代の11年5月23日は中継ぎで登板し、2回4失点と打ち込まれた。計3度の登板で0勝1敗と、ほろ苦い思いを味わってきた。

 白星を取りたい-。自身のルーティンに、名古屋色を取り入れた。1日と登板前夜2日の夕食は、2夜連続で名古屋コーチンのソテー。登板当日に最高のパフォーマンスを発揮するため、脂身の少ない鶏肉を今季から登板前に食べるようにしている。「栄養士の人からアドバイスをもらって。さっぱりしているし、翌日に残らない」と効果を説明する。準備万全で、見事にリベンジに成功した。【栗田尚樹】