本社首脳はFA組の開幕後の不在を問題視していた。低迷が始まる前だった5月10日の阪神戦を渡辺恒雄同代表取締役主筆が観戦。「ダメなところはある。3人、ここにいないじゃないか。専門的なことは分からないからスカウトに聞いてくれ。見る目がなかったんじゃないか」と厳しい言葉を残していた。その後の大失速が起こり、FA組不在の影響が表面化した。

 堤GMは就任後、長年の重要課題である育成も重視し、昨季から3軍を設立した。育成枠で外国人選手も獲得し、将来性を見越したチームづくりに着手。スカウトの態勢を見直し、ドラフトでの新人獲得もビジョンの再構築を図っていた。

 だが育成の芽が出始める前に、チームは低迷という混乱に巻き込まれた。巨人がシーズン途中で人事に大なたを振るうことになる。

 ◆堤辰佳(つつみ・たつよし)1965年(昭40)8月22日生まれ、熊本県出身。元アマチュア野球選手で熊本・済々黌高から慶大に進学。主将も務め、同大卒の高橋監督の先輩にもあたる。89年に読売新聞社に入社し、社会部などに所属。巨人では広報部長やGM補佐などを歴任し、15年5月からGMに就いた。

 ◆鹿取義隆(かとり・よしたか)1957年(昭32)3月10日、高知県生まれ。高知商から明大を経て78年ドラフト外で巨人入団。リーグ最多の63試合に登板した87年は「鹿取大明神」と呼ばれ、王巨人の初優勝に貢献。90年に西武へ移籍し、最優秀救援のタイトルを獲得。抑え、中継ぎで西武の5連覇を支えた。97年で現役を引退し、98~00年に巨人で投手コーチ。01年はドジャース傘下1Aで投手コーチ、02~03年は巨人のヘッドコーチ。14年に侍ジャパンのTDに就任し、15年のプレミア12で投手コーチを務めた。通算成績は755試合で91勝46敗131セーブ、防御率2・76。

 ◆GM(ゼネラルマネジャー)監督、コーチ、選手らの人事権を持つ、選手獲得やトレードなどチームづくりの最高責任者。95年ロッテが広岡達朗氏を初めて起用。中村勝広氏はオリックスと阪神、高田繁氏は日本ハムとDeNAの2球団で就任。他には楽天の三村敏之氏や日本ハムの山田正雄氏、中日の落合博満氏らプロ野球経験者を起用する球団が多い。球界OB以外では巨人の清武英利氏、原沢敦氏、堤辰佳氏、日本ハムの吉村浩氏ら。