巨人での門出は1軍がはるか遠くに見える日々から始まった。焦りが不安を誘発する。ふがいない現実からの脱却は恐怖との決別だった。1軍登板が内定した先週。「正直、全力で投げているかといったら、自分の中でまだクエスチョン。思い切り投げる、吹っ切れた瞬間は、いまだにない。もう去年の自分には戻れないと思っている」と腹を決めた。右肩の不安が完全に消えることを待つことをやめ「どうしたら現状の自分が通用するのか。そういうところで野球をやっている」と結果だけを直視した。

 野球人生の節目の1勝だった。巨人の一員となった今、古巣にいい顔をすることは、むしろ不誠実だと考える。「活躍しないとDeNAに申し訳ないという気持ちは、ないです。それはまた別。今はジャイアンツの選手。ブーイングしてもらっても構わない。自分を取ってくれたジャイアンツのために結果を出すだけ」。古巣との決別の登板で自らの意思を示した。「FAで来た責任とプライドがある。なんとか前を向いてやってこられた」。存分に暴れるために、ここに来た。【為田聡史】

 ▼巨人が山口俊、マシソン、カミネロの3人でノーヒットノーランを達成。公式戦で継投によるノーヒットノーランは41年6月22日黒鷲、同年8月2日阪急、06年4月15日日本ハムに次いで史上4度目(日本シリーズでは07年第5戦中日が山井、岩瀬で完全試合)。セ・リーグの球団では初めてだ。3投手で達成した06年日本ハムは延長12回の試合で、9回試合では2投手で達成の41年黒鷲と阪急以来、76年ぶり。9回試合で3投手によるノーヒットノーランは初めてだった。