仙さん参らせた! 阪神岩貞祐太投手(25)が「日本生命セ・パ交流戦」の楽天戦で、7回をソロ本塁打による1安打1失点に抑え、復活の3勝目を挙げた。5月3日ヤクルト戦以来44日ぶりの白星。視察した阪神元監督の楽天星野仙一副会長(70)も「参りました!」と大絶賛だ。チームの2年ぶり交流戦勝ち越しを導き、首位広島に2差に接近。今日も明日も、星野さんに恩返しの白星量産でコイをつかまえるぞ。

 岩貞に笑顔が戻った。相手はパ・リーグ首位の楽天。2軍でもがいた悔しさを胸に、捕手のミットを目がけて左腕を振った。7回を投げ、許したヒットは3回に三好に浴びたソロ1発のみ。好リズムであっという間に7回を投げ切った。

 岩貞 (岡崎)太一さんが分析してくれた通りに配球してくれたので、思い切り腕を振っていけました。

 女房役の岡崎に感謝した。序盤は真っすぐ中心に攻めた。だがひと回りしてからチェンジアップなどの変化球の割合をアップし、的を絞らせなかった。パの好調打線にも臆せず投球し、凡打の山を築いた。

 不振からはい上がった。5月の降格中、久保2軍投手コーチや福原育成コーチのもと、バラバラだったフォーム修正に取り組んだ。重点的に意識したのは体重移動だった。そのおかげで「カットボールが良くなってきました」と明かす。改良したフォームと持ち球に手ごたえをつかむ一石二鳥で、1軍に戻ってきた。

 “闘将”も降参だった。この日はかつて阪神で監督を務め、03年に18年ぶりのリーグ制覇を導いた楽天星野副会長も甲子園を訪れていた。岩貞の快投に「ハマっちゃったなあ。チェンジアップが良かったね。途中から真っすぐに切り替えたのが良かった。腕を振り出したからなあ」と苦笑い。試合後、通路で平田コーチとすれ違った時には「参りました!」とまたまた苦笑いだ。昔は猛虎を束ねていたが今は敵。それでもスポーツマンとして健闘をたたえ、うなずきながら球場をあとにした。

 勝負師の予感なのか。ゲーム前、星野副会長がこんなことをつぶやいていた。「岩貞か。ウチは左が多いからハマるとヤバイな」。左打者の多い楽天打線。読み通り、背番号17の前にヒット1本に抑え込まれた。

 金本監督も合格点を与えた。「いい時の岩貞と比べるとまだまだかなと思うが、万全ではない中で7回を1点に抑えたのはナイスピッチングです」。チームは2年ぶりに交流戦の勝ち越しを決め、首位広島とのゲーム差も2に縮めた。もう1つ勝ってカード勝ち越し、いや残り2戦とも勝って、星野さんに最高の恩返しがしたい。【山川智之】

 ▼阪神は交流戦1位の可能性を保った。各球団が残り2試合で(1)阪神が○○(2)広島-ソフトバンクが○●(3)西武が○○、○△以外のとき、阪神、広島、ソフトバンクの3球団が12勝6敗、勝率6割6分7厘で並ぶ。規定により、交流戦18試合のTQB(得点÷攻撃イニング)-(失点÷守備イニング)が大きいチームが上位となるため。なお西武が△△の場合10勝5敗3分けで勝率6割6分7厘だが、勝ち数が他の3球団より少ないため下位となる。