日本ハム有原の表情は晴れやかだった。雨が降りやまず、足元が悪くても踏ん張った。8回まで許した安打は初回の内野安打のみ。9回に完封を逃したところで救援を仰いだが、1軍復帰初登板で約1カ月ぶりの4勝目を挙げた。「チームに迷惑しか掛けてこなかったので、うれしいです」と顔をほころばせた。

 最速150キロの直球を軸に、きっちりと低めを狙い続けた。6回裏には雨で26分間の中断もあったが、集中力は切らさなかった。7回にはギルメットの140キロ直球を右前に運び、プロ初安打もマークした。

 なじみのあるマウンドで力を取り戻した。早大時代、62試合を投げたマウンドに、14年11月の早慶戦以来戻ってきた。「あの時と今では違う」と、プロとして成長した姿を見せようと臨んだ。栗山監督の「なんとかするんだという思いが出ていた。神宮で投げて何かを感じてくれればと思った」という願いがしっかり届いた。

 3週間で自分を見つめ直した。今季3年目で開幕投手の大役を託された。だが結果は6回途中6失点(自責4)でKO。開幕戦当日、女房役を務めた市川は「とても冷静ではなかったから」と、試合についての反省を翌日にずらすほど、悔しさを募らせていた。それから4連敗と苦しんだ。5敗目を喫した5月27日ソフトバンク戦でついに栗山監督が2軍行きを決断。同28日に出場選手登録を抹消され、鎌ケ谷で調整した。「悔しかった。結果を出したいと思って練習した」。その時「カットボールに頼るより、真っすぐを」との投手コーチからの言葉を信じ、直球に力を入れて取り組んだ。その成果をこの日の投球に込めた。

 リーグ戦再開を前に、有原の復活は好材料。さらに離脱中の大谷や近藤がもうすぐ復帰すれば、戦力も整う。「チームに貢献できるように頑張ります。まだまだ練習が必要」。再スタートを切った背番号16は頼もしさを取り戻していた。【保坂果那】