みちのくの地に根を生やして12年。楽天がついに東北6県を完全制覇する。今日28日のオリックス10回戦はリニューアルされた青森・弘前市運動公園野球場(はるか夢球場)で行われる。青森での1軍公式戦開催は88年のヤクルト-広島戦以来29年ぶり。楽天球団創設以来、これまで唯一、青森だけ1軍の公式戦が開催できなかった。先発する辛島航投手(26)は27日、本拠Koboパーク宮城で軽く調整し、弘前に乗り込んだ。

 今季5勝を挙げている男が、ついに1軍へ帰ってきた。東北6県完全制覇の記念すべき日に先発する辛島に気負いはなかった。「特別なことは何もしてない。ちょっと走り込んだだけ」。6日のDeNA戦で2回3失点KO後は登録を抹消されファームで調整を続けた。22日のイースタン巨人戦で先発し4回無失点に抑え、復調をアピール。3週間ぶりの1軍先発マウンドをかみしめる。

 今季は出だしから好調だった辛島は4月18日の西武戦(県営大宮)、5月16日の日本ハム戦(秋田)で勝利。すでに地方球場で2勝挙げており「地方は慣れたもの。半分ぐらいは地方で投げている」と平然としたもの。与田剛投手コーチ(51)は辛島の“地方球場キラー”ぶりを説明した。

 与田コーチ 辛島の対応能力は抜群。よく言えばあまり考えてない(笑い)。地方球場のマウンドって硬さや傾斜が違う。辛島には変なこだわりがない。相手だってこのマウンドで投げるじゃないですか、と開き直って投げられる。

 この日のKoboパーク宮城での練習は終始リラックスムードだった。報道陣から、29年前にヤクルト-広島戦が行われたと聞かされると、26歳の辛島は「俺生まれてないじゃん」と目を白黒させた。その試合で当時ヤクルトの池山隆寛チーフコーチ(51)が本塁打を打ったことを伝え聞くと「池山さんがいいところで代打で打ってくれるでしょう」と笑っておどけるほど、今の辛島には余裕がある。背番号58の左腕が、歴史の1ページを切り開く。【高橋洋平】