思いを実らせた。延長11回2死二、三塁。ロッテ三木は「どんな形でもいい。何とか1点。バットに当たれば何か起こる」と打席に向かった。西武の投手は右腕牧田。とっておきの左の代打・福浦もいたが、伊東監督は「一塁が空いている。歩かされるかな。三木で勝負」と腹をくくった。その期待に応えるように、左前へ決勝打を放った。カウント2-2と追い込まれたが、いつもより指1本分バットを短く持ち、スライダーに食らいついた。

 プロ4年目。昨季までの通算打率は1割7分で「守備の人」のイメージが強かったが、今季は2割台後半をキープ。バットでも貢献している。23日のオリックス戦ではプロ初の4安打。試合後は「変なこと起きるんちゃうか」と真顔で言った。翌日も「通り魔にでも刺されるかと思った」と、宿舎を出るとキョロキョロしたほどだった。

 活躍の下地を作ったのは、やはり守備だった。今春キャンプで中村、平沢らと遊撃争いを繰り広げたが、最終的に開幕2軍スタート。だが、中村たちに守備のミスが続き、三木は4月早々に1軍昇格を果たした。5月後半からは遊撃で先発出場を続けている。「これまでは数少ない打席で失敗したら、と思ってました。今はスタメンでも余裕を持ててます。その分、周りが見えてます」。出続けることが好循環を生んだ。

 大毎時代の62年以来、球団55年ぶりの沖縄での試合で勝利。リードしながら降雨ノーゲームの前日の借りも返した。三木は「沖縄での思い出1号です」と笑顔だった。【古川真弥】