振り切ったバットが背中についた。西武浅村は甘く入った143キロ直球を迷わずたたいた。2回2死二、三塁。9号3ランを左中間席中段に放り込んだ。1回の先制8号ソロに続く3年ぶり3回目の2打席連続弾。今季両リーグ最多の16得点の打線をけん引し、「みんなでつないで取れた勝ちです」とうなずいた。

 6月の月間打率は2割3分8厘。不振の中でもフルスイングは失わなかった。「その中で結果を残すことが理想。崩そうとは思わない」。低めのカーブをとらえた初回のアーチは26試合ぶりの1発だった。「本塁打を打ちたい気持ちもあったし、焦りもあった」と明かしたが、持ち味を消す選択肢はなかった。思い切り振り抜いたからこそ「入るとは思わなかった」打球が、右翼席最前列で弾んだ。

 今年から主将に就任。「今まで以上に、自分がアウトになってもチームが勝てばいいと考えるようになった」という。責任感と自己犠牲の意識を持ちながら、勝負どころで決める。それが主軸の仕事。「自分はたくさん本塁打を打つ打者じゃない。勘違いせず、とにかくヒットを打っていきたい」と引き締めた。目指す頂点へ「上位に離されないようにしがみついて戦う。その一心だけ」。覚悟とフルスイングで、チームを引っ張っていく。【佐竹実】