人生初体験に、ロッテ加藤翔平外野手(26)は「めちゃくちゃ、しびれました」と興奮した。1-2の9回2死満塁、オリックス平野から左越えに2点適時二塁打を放った。逆転サヨナラ打は野球人生初めてだ。「みんな投げてるから」と二塁を回ったところでヘルメットを放り投げ、仲間たちにもみくちゃにされた。

 切り替えられた。「がっついて」2球連続フォークを空振り。あっという間に追い込まれたが、腹をくくれた。2-2の並行カウントまで粘り、5球目の外角150キロを捉えた。三振しない自信があった。5月から1カ月半の2軍暮らし。ケガから復帰過程の角中と一緒だった。「三振が僕の課題。カクさんが参考になった」と、2ストライクからは角中ばりにノーステップ打法を導入。三振率(三振÷打席)は2軍落ち前の3割から、再昇格後は1割9厘と激減した。

 伊東監督に応えたかった。4月のこと。ベンチで横に呼ばれ、懇々と「家族が出来たんだろう。一家の主として、もっとしっかりやれ」と説教された。バントミスなど、肝心な場面で失敗が多かった。試合中だったが、涙がこぼれた。前日の練習日にも「悔いのないようにやろう」と言ってくれた。最下位だろうと関係ない。やるしかなかった。

 昨年結婚した夫人も観戦していた。「監督には、たくさん怒られる。でもチャンスをくれる。残り61試合。1つでも、2つでも、成長した姿を見せたい」と力強く言った。連敗を4で止め、後半戦白星スタート。「(伊東監督に)今日はよう打ってくれたな、と褒めてもらった」と少年のようにうれしそうに笑った。【古川真弥】