広島が終盤に得点を重ね、今季最多の14得点で大勝した。緒方孝市監督(48)が掲げる機動力野球全開で、本塁打はなく、つないで、走って得点を積み重ねた。敵地甲子園で阪神に勝ち越し、貯金は今季最多の24に増やし。2位阪神とのゲーム差も9に拡大。最短で25日に優勝マジック42が点灯する。リーグ2連覇へ向け、視界は大きく開けた。

 何度も、広島ナインが甲子園のダイヤモンドを疾走した。今季6度目の2桁得点も本塁打はなし。つなぎの野球を活性化させたのは、広島緒方監督が掲げる機動力野球だった。広島野球で勝利した指揮官は試合後「普通にやってくれた。当たり前の走塁をしただけ」と言いながらも胸を張り、表情は誇らしげだった。

 決勝打は8回、ベテラン新井の適時二塁打だった。だが、直前の松山の打席で一塁走者鈴木が3度スタートを切るなどマテオを揺さぶり、新井との直球勝負を引き出した。勝ち越した直後の1死二塁では、代走から出場した野間が、弱い右前打で一気に三塁を蹴った。前進守備の右翼福留でも「行けると思った(野間)」と迷いはなかった。最後はホームベースを蹴るようなスライディングで返球よりも速く、滑り抜けた。

 俊足選手だけではない。同じ8回、1死満塁から田中の右翼線への当たりで、一塁走者エルドレッドは二塁、三塁を回ってかえってきた。初得点も1死一、二塁からの右前打で中継態勢ができていない阪神内野陣の隙を突いて二塁走者菊池が生還。抜け目のない走塁が阪神を追い詰めた。

 思い切ったベースランニングには前情報がある。前日18日は序盤の大量リードもあり、河田三塁コーチは判断が難しいタイミングであれば思い切って腕を回した。阪神中継プレーと送球能力を見極めた。収集したデータが、何度も右手を回したベースランニングにつながった。緒方監督も「すごくいい判断をして回してくれた。選手の走塁も考えてのこと。選手はしっかりと役割を果たしてくれた」と全幅の信頼を寄せる。

 同点の8回の1イニング8得点で試合を決めても、攻撃の手を緩めなかった。9回にも3点を加え、今季最多の14得点。9点差逆転負けを味わった甲子園で今度は足でかき回し、阪神に屈辱を味わわせた。貯金最多24で2位阪神に9ゲーム差。最短で25日にマジック42が点灯する。広島が得意の機動力野球で加速した。【前原淳】