左アキレス腱(けん)断裂から復帰した阪神西岡剛内野手(32)のプレーに、歓声と悲鳴が交錯した。1点を追う7回、試合を振り出しに戻す中前適時打を放ちガッツポーズ。甲子園に歓喜の渦を呼んだが、9回の中堅守備ではフェンス際の飛球を落球。大量リードを許した後とはいえ、守備では悔しい結果となった。

 感情が爆発した。2-3と逆転を許して迎えた7回、2死二塁の場面。打席に立った西岡は燃えていた。カウント2-1からの4球目。広島一岡の外角フォークに鬼の形相で食らいついた。中堅手丸が猛チャージでダイビングキャッチを試みる。打球は数センチ前ではずんで差し出したグラブに収まった。二塁走者の糸原が一気に生還。一塁ベースに到達した西岡は、大声で何かを叫んだ。

 「売られたケンカは買ったつもり。なめられたくはないんで。結果としてやり返した」

 理由があった。1ストライクから2球目が足元を襲った。その直後に西岡の耳に、ある言葉が聞こえた。「もう1球、足元いったれ!」。左アキレス腱(けん)断裂という大けがをしてから約1年。壮絶なリハビリを経て甲子園に帰ってきた男にとって、我慢できない言葉だった。グッと歯を食いしばり2試合連続となるタイムリー。執念だった。

 「最後にエラーしたから…」

 ワンサイドゲームでも最後までファイティングポーズを取り続けたが、一方で守備のミスを猛省した。8点差と大差がついた9回の守備。先頭安部の飛球をバックして捕球を試みたが、グラブに当てて落球。西岡本人もぼうぜん自失のまさかのプレーだった。

 前日18日には2回1死満塁の場面で、石原の浅い飛球にダイブするも届かず。適時打にしてしまった。1軍での中堅守備は、この日が2試合目。慣れないポジションだが、言い訳することは一切ない。試合前には入念に中堅でノックを繰り返し受けるなど必死だ。

 「監督も試合が終わった後のミーティングで諦めずに上を向いて行こうと言っていた。気合を入れ直した」

 感情をむき出しにする。泥臭くプレーする。そして必ず前を向く。今のチームには、野球小僧のような西岡がやはり必要だ。【桝井聡】