打の救世主がロジャースなら、投の救世主は秋山だ。阪神秋山拓巳投手(26)が9回を1失点に抑えて8勝目をマークした。あと1死で自身7年ぶり、今季チーム初完封は逃したが、2戦23失点の投壊で連敗した投手陣を救うナイスピッチ。今季のチーム2完投はいずれも秋山だ。プロ7年間で6勝だった右腕が、今や9勝で勝ち頭のメッセンジャーに次ぐ白星量産。アッキャマン、頼もしいぞ!

 0行進で、9回2死三塁まできた。東都の虎党からはあと1人コールの大合唱。阪神秋山も最後の力を振り絞るように腕を振った。だが無情にも、中村に投じた121球目を左前へはじき返された。ミートされた瞬間、打球の行方を見ず、悔しそうにマウンド上でしゃがみ込んだ。だがしっかり切り替えた。ヤクルト藤井を二ゴロに打ち取り、今季8勝目を完投で飾った。

 秋山 (完封は)意識していました。でも1人で投げ切れてよかったです。(1回は)高山に助けてもらった。それからは緩急を使って投げられました。

 入団1年目の10年以来の7年ぶりの完封は逃した。だがチームは2戦23失点で2連敗中だった。普段助けてもらっているリリーバーたちを休ませようと懸命に腕を振った。チームは今季2完投だが、いずれも秋山が頑張った結果だ。

 決していい立ち上がりではなかった。1回は先頭の山田に11球粘られた末にヒットを許すなど、1死二塁。坂口に中前打を許したが、高山の好返球でタッチアウト。仲間の助けを受けてピンチをしのいでからは、直球からカーブやフォーク主体の投球に変えた。変化球も交えて巧みにかわすと、相手の狙いを外すように、直球に切り替え熱投。9回を2奪三振ながらも無四球で、打線に好リズムをもたらした。

 ちょうど1週間前、球宴に出場した。15日の2戦目に2イニング登板。ソフトバンク柳田を空振り三振に斬ったが、デスパイネにはバックスクリーン直撃弾を浴びるなど、強打者との対戦ができた。「いい経験になりました」。初めての夢の舞台で一流からエキスを吸収。秋山にとって野球人としてプラスの経験となった。入団7年間で6勝だった男が、今季大ブレークしてメッセンジャーに次ぐ8勝目。精神的にもたくましくなった背番号46が、後半戦もチーム逆転Vへ大車輪となる。【山川智之】