赤い獅子の勢いは鷹にも止められなかった。西武が中村剛也内野手(33)の24号ソロを含む3安打2打点の活躍でソフトバンクに勝利。この1発で本拠地メットライフドームでの本塁打を歴代最多の169本とした。チームは辻発彦監督(58)が生まれた年の1958年以来、59年ぶりの13連勝。7月19日時点で11あった首位とのゲーム差は、一気に5・5。大逆転Vが、いよいよ視界に入ってきた。

 これぞ4番のひと振りだった。1点差で迎えた7回。中村は力みのないスイングでチェンジアップを完璧にとらえた。左翼席中段にたたき込む24号ソロ。この回一挙4得点を挙げる口火の1発に「(本塁打を)狙ったわけではないけど、いい打撃が出来た。勝ててよかった」とうなずいた。

 7月27日オリックス戦以来、29打席ぶりのアーチ。チームが大型連勝の中、本来の打撃は影を潜めていた。安打も直前2カードでわずか1本。不振脱却へ、7月下旬の試合前練習から右手の革手袋を外して振り込んだ。「ゆっくりと振りたかったんで。余計な力が入らないようにです」。もともと、利き手の右手は緩く握り「ボールを捉えるためだけに使うイメージ」。そこに知らぬ間に生じていたバットをこねるような力み。素手での練習は不必要な力を抜くための策だった。

 徐々に取り戻した本来の打撃。力が一切入っていないようなスイングでの、らしい打球が確実に増えた。この日の練習から右手に革手袋が戻った。試合前、辻監督に「打ちますよ」と誓ったのは、手応えの裏付けがあった。