多少のことは、気にしない。楽天美馬学投手(30)が、6回1/3を7安打1失点の内容で自己最多タイの9勝目を挙げた。試合開始からグラウンド上に大量発生した小虫をものともせず、初出場となった7月14日のオールスター第1戦で「関係者ですか?」と言われたハプニングも乗り越え、クールに試合を作った。

 試合を映し出すテレビ画面が、灰色に変色した。故障でも、雨のせいでもない。試合開始直後から小さな虫が、グラウンド上に大量に発生した。美馬は、口元の辺りを手で振り払った。2点リードの5回1死一塁。視界を遮るほどの大群が、体に襲いかかった。それでも、顔色1つ変えなかった。「びっくりしました。これ試合大丈夫かなと、バッターもこれで見れないんじゃないかと思ってました」と冗談を飛ばすほどに、冷静だった。角中、井口と連続三振に仕留め、クールな表情でベンチへと退いた。

 虫を無視し、自身の投球に集中した。「最初は雨かと思ったんですけど。これだけの虫は初めてですね。ズボンにもくっついていましたけど。状態が悪い中で、勝てたことは大きい」。これで16年にマークした9勝に並び、自己最多タイの白星となった。「数字を意識するといいことないので、これからも普通に頑張ります」とお立ち台でも冷静だった。

 思い返せば、あのハプニングも乗り越えた。プロ7年目で、今年初めてオールスターに出場した。7月14日のナゴヤドームでの第1戦で“事件”は起きた。球場入りの際に警備員から「関係者の方ですか?」と尋ねられた。ショックを受けたが、多少のことでは動じない。第2戦のZOZOマリンではスムーズに球場に入ることができ、その日の登板では2回を無安打無失点と抜群の内容だった。どんな時でも、クール。そんな男だからこそ、虫に影響されるはずがない。「投球自体は問題ないです」と淡々と話す、その表情が全てを物語っていた。【栗田尚樹】