阪神森越の移籍後初安打が、勝ち越し劇を呼んだ。延長11回、先頭で打席へ。「後ろに糸井さんとか、いいバッターがいるので、どんどん積極的にいって、塁に出ることを考えた」。思い切って初球をスイング。打球は左前に弾んだ。「古巣相手に打席に立たせてもらって、なんとか打ちたいと思っていた」。中日を戦力外になり、15年に阪神へ移籍。3年かかったが慣れ親しんだナゴヤドームで、1つ恩返しができた。

 前のめりな気持ちが空回りしたこともある。カード初戦の18日。8回にショートへゴロを放ち、走りだす瞬間に転んだ。結果は併殺打。そんなミスも、笑いに変えるムードメーカーぶりを発揮している。翌日19日の打撃練習では、ラストボールを打つと一塁まで全力疾走。失敗を笑いに変えて周囲をリラックスさせた。

 金本監督は「先頭でね。しかもいい当たりのヒット。地道にやっている成果じゃないですか」と評価した。

 森越は「最近は、守ってから1打席もらえている。それを無駄にせず頑張りたい」と、与えられたチャンスをモノにするつもりだ。 今オフにはレベルアップのために、上本や大和とともに自主トレに励んだ。その意気込みが、鳥谷の勝ち越し打を生んだ。この日は“守備の人”がバットでみせつけた。【真柴健】

 ◆森越祐人(もりこし・ゆうと)1988年(昭63)8月11日、愛知県生まれ。愛知啓成3年春に甲子園へ出場し、PL学園戦で前田健太(現ドジャース)から2二塁打。名城大を経て、10年ドラフト4位で中日入り。14年限りで戦力外となり、15年阪神移籍。堅実な内野守備に定評がある。178センチ、73キロ。右投げ右打ち。