鷹のエースが完全復活で帰ってきた。5月に左肘を手術したソフトバンク和田毅投手(36)が、142日ぶりの1軍マウンドで6回2安打無失点9奪三振の圧巻の内容で3勝目を挙げた。ダイエー時代の同僚で今季限りで引退を表明しているロッテ井口資仁内野手(42)とは3打席真っ向勝負し、2打席目には史上51人目の通算1500奪三振で惜別した。チームは連敗を2で止め、30日にも優勝マジック17が点灯する。

 王座奪還へ頼もしいエースが帰ってきた。左肘手術後、初の1軍戦となった和田が、圧倒的な内容で3勝目を挙げた。「今の段階ではできることを全て出せた」と充実の表情だった。本拠地ヤフオクドームのマウンドは開幕戦以来。最速142キロでも伸びのある直球で押し、ロッテの選手に「(26日に投げた剛腕)千賀より速い」と言わしめた。5回こそ2四球を与えて2死満塁のピンチを迎えたが、荻野を三ゴロに仕留めてしのいだ。

 左肘痛で4月に抹消された当初は、手術を回避するつもりだった。だが普段の生活にも支障が出始めたことで、5月22日、神奈川県内の病院で内視鏡による肘頭骨棘(こっきょく)切除術(内側および肘頭窩)に踏み切った。「手術で取ってもらったのは2センチくらいの骨。こいつがあったから投げるたびに音がしたのかと思った。スッキリした」。骨はホルマリン漬けにして自宅に置いている。過去2回の手術で取った骨も同様に保管。その骨は長年、第一線で活躍を続けてきた勲章でもある。

 当初は9月か10月に復帰予定だったが、都内で高気圧酸素治療器を使うなど、予想以上に順調に回復した。そのご褒美のように、井口の福岡最終戦が復帰戦となった。6回2死、最後の対決。「全部ど真ん中めがけて投げた。成長している姿を見せたかった」と、3球全て直球を投じ中飛に打ち取った。4回の第2打席では通算1500個目となる三振を奪った。「夢にも思わなかった。一生忘れない投球になった」と巡り合わせを喜んだ。

 この日は90球前後の球数制限があった中で、満点解答。工藤監督は「たいしたもんだ。予想をはるかに超えた」と絶賛した。ベテランが優勝へのラストスパートを引っ張る。

 ▼通算1500奪三振=和田(ソフトバンク) 27日のロッテ21回戦(ヤフオクドーム)の4回、井口を空振り三振に仕留めて達成。プロ野球51人目。初奪三振は03年4月1日の近鉄2回戦(大阪ドーム)でローズから。通算1624回2/3で達成は07年石井一(ヤクルト)72年江夏(阪神)11年杉内(ソフトバンク)に次いでスピード4位。スピード上位には奪三振王経験者が並んでいる中、和田が奪三振のタイトルなしでスピード4位に食い込んだ。