進化した姿を見せつけた。西武菊池雄星投手(26)が2段モーションと判定された反則投球を克服し、チームを4月23日以来の2位に浮上させた。楽天オコエに先頭打者アーチを許したものの、動じることなく9回5安打2失点で完投勝利。楽天戦は今季負けなしの6連勝でハーラートップタイの13勝目を挙げた。防御率、奪三振と合わせて投手3部門でトップ。ニュー雄星が確かな成長を示した。

 意地だった。最後の打者を空振り三振に仕留めると、菊池は静かにうなずいた。「投げる前から絶対完投すると決めていた。ここで打たれて『あのフォームだったから(勝てていた)』と言われるのは嫌だった。絶対勝ちたかった」。志願して上がった9回を3人斬り。2段モーション判定の原因となった右足を上げた後に、もう1度上げる動作のない新フォームで進化した姿を見せつけた。

 「長いシーズンを投げていれば、いろいろある。いかに早く切り替えられるか」。今季、壁に当たる度に、この言葉を繰り返した。去年までは不調に陥ると過剰なまでにフォームを意識してしまっていたが、10勝目を挙げた直後の7月下旬、言った。「今年は(フォームの)乱れの原因が自分で分かるようになった。土肥さん(投手コーチ)と3年間積み重ねてきたおかげ。その時間は決して無駄ではなかった」。 体に染みこませたフォームの見直しは簡単ではないが、反則投球と判定された以上、修正しなければならない。下を向いている時間はない。「また新しくつくっていく感覚です」と必死に取り組んだ。己の感覚を信じ、あえてNPBから問題なしと言われた4月の投球映像は見なかった。連続四球を与えた5回に「どうやって投げていたか分からなくなった」と明かしたが、「自分を俯瞰(ふかん)して、チェックポイントを思い起こせた」と最少失点で切り抜けた。

 戻すのではなく、進化する-。8年目の覚悟があるからこそだった。「フルシーズン投げる。今年の目標はそれだけというくらいの気持ち」。結果を残し続けてこそ成し遂げられる。強い決意が不安や困惑、複雑な感情を乗り越えさせた。

 逆球もフォームのばらつきもあった。納得のいく投球ではなかったかもしれない。「上だけを目指して頑張るだけ」と誓った菊池。この日の129球で確かな成長を遂げた。【佐竹実】