連夜の劇的勝利。流れをつくったのは、前日5日のヒーロー安部だった。1点差に迫った8回。なおも2死二塁で、マテオの低めスライダーをたたいた。右翼前にライナーではじき返すと、バウンド処理を誤った糸井が後逸する間に三塁を陥れた(記録は適時打と右翼失策)。真っ赤に染まったスタンドが沸いた。

 2位阪神との直接対決。前日の初戦は逆転サヨナラ2ランで大きな流れを生んだ。この日は左腕岩田でも「6番三塁」でスタメン出場。岩田には3打数無安打に抑えられるも、虎のセットアッパーを打ち砕いた。 「覇気です。チャンスで回ってきたので覇気で打ちました」。気持ちで運んだ。

 攻守に安定感を発揮しながらも、常に同じ左打ちの西川との競争に身を置く。厳しい状況にも、決してネガティブな言葉を口にしない。猛暑日に大粒の汗を流しながら「今日は涼しいな」と笑い、連戦続きでも「野球って楽しい」とわざと大きな声を出す。超が付くポジティブ思考は、2年前に2軍で言われ続けた「覇気が足りない」という言葉を自分に言い聞かせているからだ。

 優勝に向かうチームの勢いに乗って、安部は初の規定打席到達だけでなく、首位打者獲得も夢ではなくなってきた。追走する阪神に引導を渡す2連続サヨナラ。優勝へのカウントダウンが始まった。【前原淳】