阪神鳥谷敬内野手(36)が、通算2000安打にあと2本とした。残り4本で迎えた広島22回戦(マツダスタジアム)の7回に、好投の中村祐から左翼フェンスを直撃する適時二塁打。延長11回にも左前打を放ち、連夜のマルチ安打で偉業に「王手」をかけた。

 ここぞの場面で打ち続けたから、今がある。鳥谷は重苦しい雰囲気に平然と立ち向かい、待ちに待った2点目をたたき出した。1-0のまま迎えた7回2死一塁。中村祐に1ボール2ストライクと追い込まれながら高め直球を丁寧にミート。ライナー性の飛球を左翼フェンスに直撃させた。

 「中谷のホームランから点が取れていなかったので、追加点になったのは良かった」

 2回に5番中谷の1発で先制した後、白熱した投手戦はヒートアップ。次の1点を巡る攻防が激しさを増す中、値千金の適時二塁打を決めた。14年間、プロで一線を張り続ける底力をいとも簡単に発揮した。

 絶不調に苦しんだ昨季、左手の使い方に悩み抜いた。もともとは左利き。他の左打者より左手で強くバットを押し込める長所の持ち主だった。それが長打力アップ、右方向への強い打球を意識した結果、「左手主導で打つようになってしまっていた」という。打席で左手だけ打撃用手袋を外して、素手で感触を確かめる姿もあった。

 慣れないベンチスタートが続いた日々。「試合ってこんなに長かったんだって、気づきました」。自虐的に振り返った1年を経て、今季は自分のスタイルを取り戻しにかかった。この日の適時打は高めの直球に逆らわず、強く押し込んで流し打ってのモノ。もう、「完全復活」と表現しても支障はないだろう。

 延長11回1死からは一岡の内角高め143キロ直球を左前に落とした。「感じは悪くないです」。2戦連続マルチ安打で通算2000安打までいよいよ残り2本だ。ただ、チームは首位広島に2戦連続サヨナラ負け。「終わったことは仕方がない。明日、勝てるようにやるだけです」と語気を強めた。セ界の頂点が遠のいても、勝利を追求する姿勢だけはブレさせない。【佐井陽介】