虎一筋16年の阪神安藤優也投手(39)が15日、西宮市内のホテルで会見を開き、今季限りの現役引退を発表した。背番号と同じ16年間の現役生活を振り返り、感極まって涙ぐむ場面も。03、05年と2度のリーグ優勝に貢献した右腕は「優勝してからしか味わえない感動がある。優勝を味わってもらって、ぜひ日本一になってほしい」と後輩にメッセージを送った。

 我慢できなかった。目の前がぼやけた。16年間の現役生活を振り返った時だ。「03年、18年ぶりに優勝してその輪にいられた。05年の先発として優勝の輪に入れた。04年にアテネ五輪に出させてもらったのも思い出。08年から3年連続で開幕投手をやらせてもらった。言っていけばキリがない」。輝かしい栄光の積み重ねでここまで来た。だが、それだけではない。

 「その中で、苦しい時期もありましたけど、何とか苦しさを乗り越えて…本当にいろんなことがあった16年でした」。他人には見せることがなかった苦悩。そして努力。つらい時期を思い返すと自然と涙があふれ出た。頬を伝う涙をユニホームでぬぐい、必死に言葉をつないだ。

 決断は3日前の12日夜だった。家族との相談を経て球団に報告。そのまま金本監督やチームメートに電話した。指揮官からはねぎらいの言葉をかけられ、その後、冗談っぽく「限界やな」と声を掛けられた。しんみりした空気を吹き飛ばす金本流ジョーク。優しさを感じ取った安藤も「限界ですね」と笑って返した。

 今季は伸び盛りの若手にチャンスを与えるチーム方針もあって、1軍昇格がなかった。「今シーズンは1度も1軍に上がれず、戦力になれていないという現実と若い投手が頑張って成長しているなと感じたので、総合的に判断した」。夏本番の8月に頭の片隅に浮かんだ「引退」という2文字。シーズンが進むにつれて次第に大きくなった。

 後輩たちへのメッセージも忘れなかった。「優勝してからしか味わえない感動がある。後輩たちには優勝を味わってもらって、強いタイガースを築いていってほしい。日本一という目標は成しえなかったので、後輩たちにはぜひ日本一になってほしい」。昨季まで4年連続で50試合以上に登板。先発、救援で通算77勝66敗11セーブ、92HPをマークした。2度のリーグ優勝を経験し、虎の黄金期を知る右腕が現役生活にピリオドを打つ。その魂は必ず後輩たちに受け継がれる。【桝井聡】

 ◆安藤優也(あんどう・ゆうや)1977年(昭52)12月27日、大分県生まれ。大分雄城台-法大-トヨタ自動車を経て、01年ドラフト自由枠で阪神入り。2年目の03年に主に中継ぎで優勝に貢献。04年アテネ五輪代表。05年の勝率6割8分8厘(11勝5敗)はセ・リーグ最高(当時は表彰なし)。通算登板数485試合は球団8位。今季は1軍戦の登板はなく、ウエスタン・リーグで28試合、0勝0敗、防御率4.10。184センチ、99キロ。右投げ右打ち。