昨季、19年ぶりに最下位に沈んだ。課題の山から森監督がまず手を付けたのは「走塁革命」だった。就任会見で「ヒット1本で1点取れる野球を見習わないと」と広島の走塁を例に挙げ、2人のスペシャリストを呼び寄せた。前オリックス監督で退任後は同球団のシニアアドバイザーを務めた森脇浩司氏と侍ジャパンでヘッドコーチを務めていた奈良原浩氏だ。2人が内野守備走塁コーチに就任し、改革を着手した。

 春季キャンプではリードを広く取り、帰塁の練習に取り組んだ。けん制をもらうためだった。森脇コーチは就任時、中日のけん制球数に注目した。昨年は1年間で484回とリーグでも下位。広島田中はこの半数を1人で受けたとされる。森脇コーチは「けん制をもらうと投手の集中をそぐことができる。いかに打者に貢献できるか。足が速い人だけがやればいいのではない。全員で取り組めば大きな力になる。強いチームは必ずできている」と強調した。

 得点力アップは打力だけではない。打者をアシストする走塁。そして、その1本で得点を生み出す走塁を目指した。今年の8月中旬に昨季のけん制球数をクリアし、665を数えた。着実に浸透している。新人京田が1番打者として定着。攻撃の起点になった。

 森脇コーチは「手応えはある。来年はかたちとして見せないといけない」。指揮官も「大島、平田、京田はある程度できる。でも代わりの人はなかなか思うようにいかない」。土台はできた。チームに根付かせ、来季以降花開かせる。(続く)【宮崎えり子】