「越後のダルビッシュ」が満を持して、2度目のドラフト会議を待つ。国士舘大・椎野新(あらた)投手(4年=村上桜ケ丘)は新潟県人の大学生ではただ1人、プロ志望届を提出した。右の本格派で最速148キロ、ドラフト候補生では最長身級の195センチを誇る。8球団から調査書が届いており、高校時代は指名なしで涙をのんだ悔しさを、5年越しで晴らす。

 

 5年越しの大願成就が、現実味を帯びてきた。国士舘大・椎野は9月19日の「大安」を選び、プロ志望届の提出手続きを完了した。「野球を始めた頃から、頭の片隅にはプロ野球選手になりたいという思いがあった。大学でも続けて、目指すに越したことはないかな、と」。4年前のドラフトでは調査書ゼロから、今秋は8球団から調査書が届く存在になった。

 村上桜ケ丘では3年春の県大会を制し、夏は準V。194センチの長身で話題となり、プロ志望を表明したが指名漏れした。「その経験があったから、大学でレベルアップできたと思います」。1部のマウンドに立つことはできなかったが、1年秋から登板し、3年秋には2部優勝で最優秀投手にも輝いた。

 転機は1年時のフォーム変更だった。肘の痛みに悩まされたが、肘の位置を下げることで痛みが消え、制球も向上した。「繊細さがなく、大胆な攻めで、高さは気にしなかった」高校時代から、元オリックス捕手の辻俊哉監督(38)にはエース教育も受け、3年春からエース級でフル回転した。ベスト投球は3年秋、勝ち点4の同率で並んだ立正大との優勝決定戦で、3安打完封で胴上げ投手に。「自分の思ったところにすべてボールが行った。そこからプロを意識するようになった」と今年2月、辻監督との面談で「プロ一本で行きたい」と伝えた。辻監督も「プロは入ってからが勝負」と背中を押した。

 18日の東農大戦では、大学最後の公式戦マウンドに上がった。救援で5-0の9回1イニングを3者凡退。連勝で初勝ち点を挙げ、5位を決めた。直前の調整では「とりあえず、勝つだけ。入れ替え戦には行きたくない」と宣言していたように、自ら試合を締めて、2季連続の最下位を免れた。

 今秋は先発から抑えに変わったこともあり、「調子のよしあしがあり、波が大きかった」と苦しんだ。8試合、30回を投げて0勝4敗1セーブ、防御率2・40。9月13日の駒大1回戦では7回から9イニングをロングリリーフし、3安打無失点で延長15回引き分けの好投があった一方で、サヨナラ打も2本浴びた。それでも9月8日の青学大2回戦では、スカウトのスピードガンで自己最速を更新する148キロをマーク。ドラフトが迫っても「何も変わることはないです」と冷静に、指名を待つ。【中島正好】

 ◆椎野新(しいの・あらた)1995年(平7)10月10日、胎内市生まれ。黒川小4年時に黒川サンダースで野球を始める。黒川中では軟式野球部で最高成績は県3位。村上桜ケ丘では高3春の県大会優勝。東都大学リーグでは2部でプレーし、通算で53試合に登板して11勝21敗、防御率は1・85。195センチ、88キロ。右投げ右打ち。