2年連続4度目出場の富士大(東北3連盟)が大商大(関西5連盟第1)に4-1で勝ち、5年ぶりに1勝を挙げた。先発左腕鈴木翔天(そら、3年=向上)が5回2死一塁の場面で、左足がつって82球で緊急降板。予定よりも前倒しでリリーフしたエース右腕加藤弦(4年=八重山商工)が4回1/3を1安打7奪三振1失点に抑え、逃げ切った。12日の準々決勝は東洋大(東都大学)と対戦する。

 最後は華麗なガッツポーズで締めた。最終打者のバットが空を切った瞬間、加藤はバックスクリーンを向いて、右拳を天高く突き上げた。9回を気合で3者連続三振。飛び跳ねながらグラブタッチを繰り出し、笑顔で整列に加わった。

 加藤 声が自然に出るタイプ。勝ってよかった。3者連続は言われるまで気付かなかった。

 4回が終わった時点で鈴木翔から、左足がつりそうな状態にあることを明かされていた。通常は先発投手の球数100球を逆算してブルペンに入るが、前倒しで準備。ルーティンであるブルペン内での沈黙で集中力を高めた。「性格的におちゃらけてしまうので、4年生になってからしゃべるのをやめた。急な登板だったけど、準備はしていた」と胸を張った。

 三振を奪うたびに、ほえまくった。「自分にはすごい球がないので、常に気持ちで勝負しないと。声を出すのは気持ちを前面に出すため」。最速は144キロで、この日の直球は常時130キロ台。過去にエースとして富士大を支えた西武多和田や阪神小野ほどの剛速球はないが、気迫のこもった投球で抑えてみせた。

 勝利の方程式が完成した。8連覇を決めたリーグ最終戦から、神宮出場を決めた東北地区代表決定戦での2試合を挟み、4試合連続で鈴木翔-加藤の並びで勝っている。今春は先発で結果を出した加藤は「鈴木(翔)が信頼してくれている。先発も抑えも、勝てばどっちも格好良い」と前を向く。12日の準々決勝は東洋大が相手だ。「みんなで日本一を目指している。大学最後なので、楽しまないともったない」。底抜けに明るいエースが、初の日本一に導いてみせる。【高橋洋平】