阪神金本知憲監督(49)の「魔法の言葉」で不振の高山俊外野手(24)が息を吹き返した。チームはソフトバンク先発武田を崩せず、オープン戦は3連敗発進となったが収穫もある。2月の沖縄・宜野座キャンプから打撃で試行錯誤する高山にこの日「長打狙い禁止令」を発令。力むあまりに動きのバランスを崩すのを防ぐ狙いで、効果はてきめん。お目覚めの2安打を刻んだ。16年新人王が、中堅争いで逆襲に打って出る。

 ワンサイドゲームの劣勢をはね返したのは、不振に陥っていた高山の一撃だった。5点を追う9回1死走者なし。左腕モイネロの外寄り直球を素直にはじき返すと、ライナーで左前へはずむ。そこから打線がつながり、糸原と中谷の連続適時打を呼んだ。1歩及ばず、オープン戦は3連敗スタート。それでも、博多でせめてもの意地を見せた。

 試合後、最終回の猛攻が話題になる中、金本監督自ら切り出した。「今日、高山、一番良かったな」。5回にも、田中の速球を痛烈なゴロで中前に運んだ。2月の沖縄・宜野座キャンプ中の実戦は28打数6安打、打率2割1分4厘に低迷していた。前日3日も3打数無安打…。この日は久しぶりのマルチ安打だ。指揮官の言葉で息を吹き返した。

 金本監督 「長打狙い禁止令」を出した。結果的に長打になればいいけど力みがちょっと激しかったからね。力みから来るバランスの乱れが最近あったから。練習でしっかり振れると、どうしても試合で力んでしまうところがあったから。

 対外試合では打順も降格していった。雨天ノーゲームになった2月25日中日戦(北谷)が8番から、3日にプロ初の9番に下がり、この日も最終打者だった。試合前、片岡ヘッド兼打撃コーチと相談して高山に助言した。「練習はしっかり振らないといけないけど、試合では7割くらいの感じで、長打を狙ってはいけない」。このひと言にリラックスできたのか、よどみなくバットを出して的確にコンタクト。ヒットマンのあるべき姿だった。

 16年新人王の力量をもってしても、中堅のレギュラー奪取は一筋縄ではいかない。前日3日は同じ外野手の緒方が2軍から昇格して守護神サファテから本塁打を放っていた。高山が抱く危機感を指揮官も察する。「島田が活躍して緒方も打つ。多分、その危機感が余計、力みになっていたところがあったからね。あれくらい体に振る力がついてきたから(長打は)勝手に出る。最初から狙うからおかしくなる」。最大のライバル中谷も譲らず2安打2打点。高山の短い言葉に決意がにじむ。「頑張ります。まだまだですね」。定位置を目指して、ここから巻き返していく。【酒井俊作】