意地の一撃だった。阪神糸井嘉男外野手(36)が2号2ランを含む2安打を放ち、3戦連続マルチ安打をマーク。打率を3割8分1厘に上げ、敗戦の中で打撃好調をアピールした。

 1点を追う初回1死一塁。小笠原の外角低め130キロスライダーを捉えると、打球は右翼席に突き刺さった。一時逆転となるアーチに「先制されてしまったので、早い段階で追いつけるようにと思い、打席に入りました」と話した。

 狙いを定めた初球攻撃には伏線があった。3月17日中日とのオープン戦(ナゴヤドーム)。3番に座った糸井は、初回に小笠原の初球をたたいて中越え本塁打。リハーサルを完了していた。3週間前の快音を、見事に再現してみせた。

 前日5日のDeNA戦(横浜)では8回に右翼フェンス最上部に直撃する適時二塁打。だが金本監督から「完全に入ったと思ってさ。ホント力ないなアイツ(笑い)」とスタンドインを注文されており、その要望にも一発回答だった。

 この日は試合前練習でロングティーに取り組み、バットの軌道を確認。開幕してから試合直前にスコスコと打ち込むのは初めて。試合後は「あー、しんど」と徒労感をにじませたが、細かな調整を忘れない超人が、結果を出し続けている。【真柴健】