ヤクルト山田哲人内野手(25)が「足」で、2年ぶりの巨人戦の同一カード3連勝への道筋をつけた。初回、3回と四球で出塁すると次打者の初球に二盗に成功し、得点につなげた。16年8月26日阪神戦以来の1試合2盗塁で、今季は9試合ですでに7盗塁。そのうち5盗塁が「出塁直後の初球」に決めたものだ。山田哲の「初球盗塁」がチームに勢いと攻撃バリエーションを与え、優勝した15年以来の貯金3をもたらした。

 試合開始4時間前、山田哲の腹は決まっていた。試合前の時点で5盗塁で、そのうち3つは「次打者の初球」に成功。「そろそろ警戒されてきましたね」と用心しつつも「でも初球に行きます」と断言した。

 1回、その時が訪れた。四球で出塁すると、右翼席から「走れ!」の大合唱が起こった。巨人バッテリーの警戒レベルも上がる中で、当然のようにスタートを切った。二盗に成功後、2番西浦の犠打で三進し、バレンティンの遊ゴロで生還。無安打での先制点奪取をアシストした。同点に追いつかれた3回にも1死から四球で出塁し、初球に動いた。巨人バッテリーは外して盗塁阻止にきたが、タッチよりも先に二塁ベースへと鋭角に足を滑らせた。その2球後、西浦の左前打でホームインを果たした。

 出塁直後の初球に二盗を決めるのは容易ではない。それでも、迷わず挑む。「チームを勢いづけたいのはあります。それに2番のためにも早く(二塁に)行った方がいいと思うんです」。出塁した際のベンチからの指示は基本的にはグリーンライト(行けたらいけ)。打者は山田哲が盗塁を仕掛けるかにも注意を払う必要が生じる。「初球で決めれば(2番が)チームのためにやるべきことが明確になる」と狙いを明かした。

 15、16年とトリプルスリーを達成し「足には自信がある。感覚、タイミングでいける」と言う。事前に投手の情報などを確認。リードの歩数は決めずに帰塁を意識し、けん制死を恐れて1歩目が遅れないようにしている。今季の盗塁成功率は100%。9試合で昨季の14盗塁の半分に届いた。

 打率こそ1割7分2厘だが、出塁率はリーグ5位の4割2分9厘で、得点は同1位の13。「勝てば自分が打てなくても気分が良い。打てなくても守備と走塁でカバーしていきたい」と自覚十分の1番打者に、小川監督も「セーフになれば盛り上がって勢いもつく」とうなずいた。山田哲の「初球盗塁」が、小技もちりばめた攻め手で勝利を重ねるヤクルトの攻撃の幅を広げている。【浜本卓也】