社会人野球のJR東日本東北(宮城)西村亮新監督(43)が、3年ぶりの都市対抗出場を最低ノルマに掲げた。12年から東都大学リーグの母校・駒大で監督を務めていたが、昨年12月に選手、コーチとして活躍した古巣の監督に就任。野球の技術や成績だけでなく、人間形成にも主眼を置く。大学日本一に導き、DeNA今永昇太投手(24)らプロ選手も育てた手腕で、社会人でも頂点に挑む。日立市長杯(13日から6日間、茨城・日立市民球場ほか)が公式戦の初陣となる。

 発車、オーライ! JR東日本東北の西村新体制がスタートした。自身も選手で10年、コーチで5年を過ごした慣れ親しんだ宮城の地。チームカラーの緑を基調とした帽子をかぶると、身が引き締まった。

 西村監督 やるしかない。使命は変わらない。最低限、東京ドーム(都市対抗)に出場すること。もっともっと応援してもらえるチームを作ることが役割。ちょっと早いなとは思いましたけれど、順番が回ってきたということです。人事異動ですから。

 昨年11月の日本選手権(京セラドーム大阪)1回戦の新日鉄住金広畑戦で、エース左腕の西村祐太(28)が史上初の完全試合を達成。だが、都市対抗は2年連続で予選敗退中だ。12年に駒大の監督に就任し、14年秋には今永や、江越大賀外野手(現阪神)らを擁して東都1部で優勝。明治神宮大会も制した。翌年には2部降格の屈辱も味わった。退任した昨年は、初めてJR東日本東北の社業に専念。郡山地区センターに配属となり、無人駅の管理や事業企画を担当した。6年間、外から見てきた現場復帰。白羽の矢が立った。

 西村監督 出向という形で駒大でやらせてもらって、恩返しする時が来た。社会人の世界でも還元しろよということ。私自身も去年1年は、初めて経験する仕事の緊張感も味わいました。見えなかったものが見えた部分もある。野球部の存在価値は、やはり現場が結果を出さないといけないことを、あらためて感じた。

 1月4日に新年の練習を開始し、2月以降は沖縄や関東で実戦。オープン戦では結果も出つつある。学生と社会人の違いはあるが、大きな軸は変わらない。

 西村監督 学生の場合は先生みたいな感じ。こっちは仕事の1つとして部下を扱うイメージ。野球は一緒だが、この先に生きる道で「使えるな」と思ってもらえる人間になることが大事。人間性を磨いてくれれば良い。駒大でも優勝はもちろんうれしいけれど、卒業してから「野球をやっていて良かった」と顔を見せてくれることが一番うれしかった。あまりプロはお薦めしない。活躍すれば夢の世界だが、身を滅ぼしてしまう可能性もある。社会人で一般的な感覚を身に付けてからでも遅くはない。

 仙台6大学リーグを制した仙台大のエース岩佐政也(22)、北東北大学リーグを8連覇してベストナインにも輝いた加藤弦(22=富士大)の新人投手らも加わり、層は厚くなった。シーズン開幕へ向け「理不尽なくらいに体をいじめ抜いて」精神的な強化を図っている。

 西村監督 全国レベルにも遜色ないと思っている。ただ、土俵際に立った時に踏ん張りきれない弱さがあるのは、良くない伝統。効率だけでなく、ここぞでグッとパワーが出るメリハリある大人なチームが理想。

 06年にTDK(秋田)が都市対抗で東北勢初優勝を果たしてから12年。社会人ルーキー監督が、頂点へのレールを敷く。【取材・構成=鎌田直秀】

 ◆西村亮(にしむら・あきら)1974年(昭49)7月18日、静岡・掛川市出身。掛川北中では4番エースの主将として県大会春夏連覇。静岡高-駒大。本来は捕手だが、駒大では主将として4年春に一塁手でベストナイン。同秋にも首位打者とベストナインを獲得。97年にJR東日本東北入社。07年からコーチ。12年に駒大監督に就任。14年秋は東都1部を制し、明治神宮大会も優勝。昨年2月からJR東日本東北で社業に専念。同12月に監督就任。右投げ右打ち。血液型B。