ゴールデンウイーク(GW)9連戦の初戦を、エースが華々しく飾った。巨人菅野智之投手(28)がヤクルト打線を2安打と圧倒し、チーム一番乗りの無四球完封勝利で3勝目を挙げた。6日の前回対戦は7安打5失点と打ち込まれた相手に、攻めの投球で二塁も踏ませなかった。チームも2年ぶりの6連勝となり、貯金も1。一時は単独最下位に沈んでいたが、いよいよ波に乗ってきた。

 闘志むき出しでナインを鼓舞した。菅野はゲームを2時間半で締めると右拳を一塁ベンチへ突き出し、勝利の合図を高らかに示した。「最高の気分ですし、何物にも代えられない。9連戦の初戦をとれたことは大きい。チームとしても勢いがついたと思う」。GW9連戦の初戦を1人で投げ抜く使命を果たした。

 前回の屈辱を倍返しにした。3回、青木を足元への鋭いスライダーでばたつかせ、最後は内角の直球で一ゴロ。4回にも山田哲の胸元を147キロの直球でえぐり、尻もちをつかせ、空振り三振。ヤクルト打線の打ち気を逆手に直球系を早いカウントからストライクゾーンに集め、16個のゴロを量産。「前回やられた悔しさもあったので、今日はうまく小林と攻められた」。6日の前回対戦時に6回5失点と苦杯をなめた相手に二塁も踏ませなかった。

 勝負どころはじっくり攻めた。2点リードの7回1死、山田哲。「今日のターニングポイント。足のある山田を警戒しながら、1発のあるバレンティンと勝負したくなかった」。カウント2-2からの6球目。外角低めにスライダーが決まったかに見えたが、判定はボール。膝に手をつくほど気持ちを込めた1球にも、後ろは振り返らない。最後はこの日最速の152キロで二邪飛に押し切った。「あの勝負を抑えられたことが最後まで投げられた要因」。10球中8球に宝刀スライダーをつぎ込み、同点へのリスクを排除。完封へ突き進んだ。

 大型連戦の初戦で自身最少タイの2安打での無四球完封劇。完璧に近い内容も「体調は良くはない。ベストな投球ではないし、まだまだ良くなる」と余韻には浸らない。チームは2年ぶりの6連勝で貯金1。高橋監督は右腕の快投に「本当に言うことがない。1人で投げきってくれる投手がいると頼もしい」と目を細めた。菅野自身もGWの登板は通算8戦6勝2敗と相性が良く、今季初の貯金ができた。「まだ8連戦ある。僕は1イニングでも多く、完封を目指して投げるだけです」。戦うエースが背中でチームを引き上げる。【桑原幹久】