中身の濃い完封だ。巨人菅野智之投手(28)が自己最多タイの13奪三振で中日をシャットアウトした。2回1死からの7者連続奪三振は球団タイ記録。すべて空振りで奪い序盤から圧倒した。捕手小林との息も合い、相手に的を絞らせないしたたかさで自身の連続無失点も27イニングに伸ばした。チームは3連勝で貯金3。エースが押し上げる。

 ほえた。拳を突き上げ、もう1度ほえた。7回無死二、三塁。菅野は最大のピンチに「全員三振を取るつもりだった」。ビシエドを遊飛、福田は空振り三振に抑え、2死までこぎつけた。続く藤井を追い込み、最後は148キロ直球。内角へ構えた小林のミットより中へ入ったが、バットは空を切った。「1点を取られたら意味がない。意地で抑えました」。気持ちで、力でねじ伏せた。

 伏線は序盤にあった。2回1死、福田の2球目。136キロのフォークを初めて投げた。「前の試合であまり使っていなかったので早めに使おうと(小林)誠司と話した」。福田から4回2死の京田まで7者連続奪三振。12年杉内らに並ぶ球団タイ記録に全て空振りで並んだ。

 5回以降は直球主体に切り替えた。前半から変化球を意識させ、直球を生かした。「フォークが良かった。7回は変化球マークで来ていたから甘く入っても空振りがとれた」。1回から9回までを見据えた組み立てが快投を生んだ。

 剛速球より“140キロ”を投げたかった。昨季から導入された高性能弾道測定器「トラックマン」の数値を基に、持ち球の球速帯を把握し「直球の平均球速から10キロ遅い落ち球が足りない」と分析。自主トレから130キロ後半のシンカー習得に着手したが、手首が寝てしまう感覚が精度向上を妨げた。開幕後、1度シンカーは封印した。

 それでも、手首を立てようとする修正過程で得た感覚が、従来の持ち球で130キロ前半だったフォークに合致。球速も130キロ後半まで上がり、球速帯の不足分を埋めた。「どの球にも可能性を残したい。ピッチングに完成はない」。この日のフォークの最速は140キロ。試行錯誤が身近な引き出しを開けさせた。

 最後も気迫全開だった。9回1死一、三塁でビシエドをスライダーで空振り三振。自己最多タイの13個目の三振でしのぎ、連続無失点を27回まで伸ばした。「もっともっと最後までマウンドに立ちたい。首位の広島を捉えて優勝できるよう頑張りたい」。エースが歩む道のりに、ゴールはまだ見えない。【桑原幹久】