阪神ドラフト5位の谷川昌希投手(25)が、ラッキーなプロ初勝利を挙げた。「うれしいです。こんなに早く来るとは…。どうにか抑えられたのでよかったです」。先発小野の後を受けて5回のマウンドへ。任された1イニングを抑えると、大きなプレゼントが待っていた。「中継ぎだったので、しっかり自分の仕事をすることを考えました。自分の投球をすることで精いっぱいでした」。

 6回に糸井が逆転満塁アーチを突き刺して生まれた初白星。1球に泣いた男が、この日は1球に笑った。プロ初登板初先発した5月10日の巨人戦(東京ドーム)。順調な立ち上がりを見せたが3回、阿部にプロの洗礼といえる3ランを浴びる黒星で2軍に降格した。「1球で仕留められる怖さがあった。でも、新たに始まる1球だったと思う。投げミスは許されないと感じれたし、あそこで抑えてたらその怖さを感じていなかった。打たれたからこそ感じれたものがある」。

 鳴尾浜でひたむきに汗を流し、2軍で結果を出して勝ち取った再昇格。見事にリベンジを果たした。

 マウンド度胸は人一倍。メンタルの強さは九州三菱自動車での3年間で培った。「仕事は営業だったので、覚えることがとにかく多くて。車のことも接客であっても」。午前8時30分から野球の練習を開始。疲れを隠して午後からは車のセールス営業。終業後は個別でジムに通ってトレーニング…。そんな生活を続けるうちに、フル回転できる体力を身につけた。

 「めちゃくちゃ、きつかったですよ。しんどかったです…。でも社会人に進んでよかったなと思っています。なかなか営業しながら野球をするというのは経験できないんで。人としての成長ができた場所。仕事にも一生懸命になれました」

 今はプロの世界で、相手打者をなぎ倒すことが仕事となった。不屈の精神を持ち、プロ入りを1度も諦めなかったからこそ、夢は現実となった。この日は両親とお兄さんが現地で観戦。「(記念球は)親にあげたいです。今日、来てくれていたので」。どんなときも背中を押して支えてくれた家族に、まずは1つ恩返しができた。【真柴健】

 ◆谷川昌希(たにがわ・まさき)1992年(平4)10月6日生まれ。福岡県出身。筑陽学園から東農大、九州三菱自動車と進み、昨年ドラフト5位で阪神入団。175センチ、79キロ。右投げ右打ち。