ピンチでも、西武菊池雄星投手(27)は客観的に相手を見ていた。5-0で迎えた7回、先頭から内野安打を続けられ無死一、二塁。「直球、スライダーを待っている」。ロッテ鈴木への初球に選んだのはカーブだった。116キロを打たせ二ゴロ併殺。続くドミンゲスには一転、初球でこの日最速151キロ。空振りを奪うと、最後はスライダーで三ゴロに仕留めた。7回5安打無失点で、開幕から無傷の8連勝。交流戦明け初戦を飾った。

 17日に27歳となり、思うことがあった。「あっという間。もう9年目。若手のつもりでいたけど、いつの間にか中堅になっていた。若手も増えてきたし、先輩は減っている」。社会で働き、脂が乗ると、多くの人が抱くであろう感慨を口にした。ただ、勝負の世界で生きる身。背筋をピンと伸ばすと「(プロ野球選手は)一生できる生活ではない。1日1日を大事にしていかないと。年を重ねるごとに思います」と続けた。

 客観視できるようになったのは、試合の中だけではなかった。2年目の今井が13日にプロ初登板初先発で勝利すると「良い投手が加わって、心強い。純粋にうれしい」と喜んだ。実は「若い時は、いくら後輩でも負けたくないライバル心があった」という。負けん気は成長の原動力にもなったが、もう、そんな立場ではないと分かっている。今井に限らず、後輩には気がついたことがあれば声をかける。「(後輩が)困った時に相談できる存在でいたい。選択肢の1つでいたい」からだ。

 ベンチ裏では、今日23日に先発する今井が目をこらしていた。勝利のバトンを託した菊池は「すごいものを持っている。自分のものを出して欲しい」とエールを送った。みんなで優勝するために。【古川真弥】

 ▼菊池が開幕から無傷の8連勝。西武投手の開幕8連勝は55年河村(8連勝)56年稲尾(8連勝)85年東尾(10連勝)88年郭泰源(10連勝)94年郭泰源(9連勝)に次ぎ、24年ぶり5人目(6度目)。左投手では球団史上初めてだ。昨年8月31日楽天戦からは連続シーズンで12連勝となった。