頼れる男が“復肩”した。西武菊池雄星投手(27)が今季最長の9回を投げ、3安打1失点。救援陣が乱れて白星こそ逃したが、先発の役目を果たし、復活をアピールした。打線は秋山翔吾外野手(30)の13号決勝ソロなど、延長の2イニングで3発を放って応え、チームは10年以来8年ぶりの前半戦首位ターンを決めた。

 安堵(あんど)感と手応えが言葉ににじんだ。菊池が今季12戦目の登板で初“完投”。「肩の影響もあってイニングを食べられず、おなかペコペコでした。9回までしっかり投げられてよかった。自分に勝ちがつくとかではやっていない。チームが勝って、とにかくよかった」とうなずいた。

 左肩の機能低下の影響で、もどかしい投球が続いた。軸の直球が走らない。データを土台に感覚を呼び起こした。今季最多6失点した前回6月29日の楽天戦。「自分のボールを全く投げられなかった」要因はリリースポイントの高さだった。測定器トラックマンのデータを確認すると、16勝した昨季の平均値より5センチ低く「腕が横振りになって、真っすぐの球威がなかった。スライダーの曲がりも早くて大きくなってしまった」。前々回の同22日ロッテ戦は、逆に5センチ高かった。その5センチを下げるため、腕だけで「調整しよう」とし、負のスパイラルに陥った。

 ベストな高さは地面から「167センチぐらい。そこが一番、自分の力が伝わるポジション。腕が振られるんです」。下半身からの力を上半身に伝えながら重心移動。体を縦に回転させ、左腕はその動きについてくるイメージ。結果、腕は振るではなく、振られる形になる。「知らぬ間に肩をかばっていたのかもしれない」。KOからの1週間、振られる感覚を、もう1度つかむことだけに集中した。

 その成果が表れ9回を3安打1失点。「ストレートには手応えがあった。今日は振られていましたね」。最速は150キロ。序盤は制御に苦しんだスライダーも試合中に修正できた。それでも2四球から失点した7回は猛省。1死二、三塁からのペゲーロの遊ゴロは「三振を取らないといけなかった」と引き締めた。チームを前半戦首位ターンに導いた118球。「1週間で修正できたことはプラスに捉えたい」。10年ぶりの優勝へ欠かせない男が力強く“復肩”した。【佐竹実】