迷いなく二塁走者の阪神福留孝介外野手(41)がスタートを切った。5回、自らの適時二塁打でリードを広げた直後だ。糸井が放った打球はセンター後方へ。巨人陽岱鋼は正面を向いたまま、落下地点に入ったかのようなフェイントをかけた。しかし福留の打球判断はそんなことでは惑わされなかった。自分の目を信じてスタートを切り、ドスンとフェンスに打球が当たってすぐに悠々と生還した。

 「逆に言えば僕も(守備中にはフェイントを)やるときはやるし、難しい判断ではなかったです」

 夏の到来が、福留の調子を上向かせる。好走塁だけではない。直前の適時二塁打は内海のチェンジアップをジャストミート。じりじりと点差を縮められていた展開に「点を取られた後だったし、流れを考えながらというのもあった。なんとかしたいという思いだった。うまく打てた」。1回、3回に四球を選び、7回には池田から中前打で2打数2安打で全打席出塁した。7月は月間打率3割6分2厘を記録したが、長期ロードが始まった7月27日からの数字は4割7分4厘まではね上がっている。「いいイメージは続けていきたい」とうなずいた。

 「最後のゲッツーかな」。甲子園での思い出を問われると、福留は答えた。勝利でも本塁打でもない。95年夏の準々決勝・智弁学園戦、2点を追う9回1死一塁で放った遊併殺だ。悔しさと経験で今がある。「乗っていけると思うし、乗っていかないといけない」。23年前から変わらぬ責任感を口にして、虎の主将は東京ドームを後にした。【池本泰尚】