今の広島は巨人の4年前の姿を鏡で映しているかのようだ。14年9月。リーグ3連覇を目指していた巨人は2位広島に1ゲーム差に肉薄されていた。長野、前橋、宇都宮。地方での3連戦が「天王山」だった。結果は巨人の3連勝。特に初戦は広島ロサリオにサイクル安打を許しながらも、力でねじ伏せて先手を奪った。ここで勝てば、ペナントは決まる-。言葉にせずとも、全員が感知し、プレーに体現していた。

 今季の戦いはまだ終わっていないが、分水嶺(れい)といえるのは後半戦2カード目の敵地広島戦だった。7連勝で5ゲーム差に迫り、最高の機運で鬼門マツダに乗り込んだ。7点差を追いつき、レジェンド上原が100勝100ホールド100セーブを達成し、延長10回に若き4番岡本が勝ち越し弾を放った。最高のドラマを描いたつもりが、2死から下水流のサヨナラ2ランに屈した。

 結局、3タテを食らい、種火は消えた。あの初戦を劇的に制していれば、どうなっていたか…。禁物だが、想像せざるを得ないタラレバだ。広島は「今が勝負」と熟知している。それは優勝を積み重ねた者だけが得られる唯一無二の力だ。【巨人担当=広重竜太郎】