初のプロ野球のeスポーツリーグ「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」が11月10日に開幕する。日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメントが共同開催し、セ、パ12球団の競技者がペナントレースを争う新しい取り組みだ。今月29日には12球団によるeドラフト会議が都内であり、1日には、会議で指名される候補選手を決める東日本選考会が都内で開かれた。普段はゲームと縁遠いNPB担当記者が、その熱気に触れてきた。

全国の7623人から選ばれたパワプロの猛者83人が1日、東京ミッドタウンにある「コナミホール」に集まった。実技審査として5~6人が1組になって計14組が対戦。すぐ隣では他の試合が行われているため、イヤホンで音声を聞き、画面をにらみながらコントローラーを動かしていた。時折、「よっしゃー」などの叫び声が聞こえたが、予想とは違って選考会は静かな環境で行われていた。

参加した83人は、インターネットに接続したプレイステーション4の「パワフルプロ野球」による予選の成績上位者。年齢は17~36歳で、大半が20~30代の男性だった。昨年度大会優勝の「マエピー」こと前田恭兵さん(31)はサービス業に従事するかたわら1日3~4時間練習するという。予選1位の「ケーバック」こと加賀谷颯太さん(23)はIT企業に勤務し、1日2時間ほど練習する元高校球児。「もっとオタク度が高いと思っていた」と、参加者自身が意外と受け止めた顔ぶれがそろった。

今回の東日本選考会は実技審査と面接で約8時間続いた。8月26日の西日本選考会の参加者と合わせて、14日にはeドラフト会議に進む36人が決定。12球団が参加する29日のドラフト会議では各球団に3人ずつ指名され、総額1200万円の報酬を得るNPB公認の初のプロ選手が誕生する。

「この分野で目立ってお笑いの仕事につながればいいんですけど」と鼻息が荒かったのは実技審査で1勝4敗に終わり、面接に進めなかった漫才コンビ「Mr.ポップリン」の葛西翔也(28)。投球時にタイミングよくボタンを2度押しすると球威が増す「ナイスピッチ」というテクニックを例に挙げ「『ナイスピッチ』がうまい人は8割。僕は5割だった」と振り返った。本格的な練習期間は約2カ月といい「正直もっと練習すれば来年は上位にいけると思う」と言った。

有名ゲーマーは「ユーチューブ」にプレー動画をアップして稼ぐ時代。eスポーツ市場は拡大が見込まれ、各芸能プロダクションは「ゲーム芸人」をこぞって養成中だ。選考会で4勝1敗で面接に進んだお笑いコンビ「美女と野獣」の嶋崎幹(26)は「芸人とプロゲーマーで二足のわらじを履きたい。相乗効果が出ればいい」と意気込んだ。芸人としての月収は現在2万~3万円だが、先にゲームで名をはせるかもしれない。【斎藤直樹】

◆パワプロ コナミデジタルエンタテインメントの野球ゲームソフト「実況パワフルプロ野球」の略称。94年にスーパーファミコンのソフトで発売開始。その後、ハードを変えながらシリーズ累計で2220万本を売り上げる。スマホアプリでは3700万ダウンロード。「パワプロ2016」は約70万本売れ、現在は購入者の8割程度がオンラインに接続している。