虎が鯉を止めた。7連勝中だった首位広島との一戦で、阪神が10安打11点で快勝。大山悠輔内野手(23)が1回に4月7日以来の本塁打となる3号3ラン。1点を先制し、なお2死二、三塁で、広島九里の低めに落ちる球をすくい上げ、左越えに運んだ。広島戦を苦手としていた先発の岩貞を強力援護。若虎の活躍で敵地マツダスタジアムで大きな勝利をもぎ取った。

久しぶりの豪快な1発に、クールな男から笑みがこぼれた。約5カ月ぶりにダイヤモンドを1周すると、喜びをかみしめるようにゆっくりと、そして力強く本塁を踏んだ。ベンチに戻ると糸井から何度も背中をたたかれ、再び笑顔がはじけた。かつて阪神の主軸として活躍し、この日今季限りでの引退を表明した大先輩・新井の前で、新時代を引っ張る若虎として、力をみせつけた。

「ファウルで粘りながら、いいポイントで打つことができました。初回に得点を挙げることができて良かったです」

首位広島から大勝に導く1発だった。初回、1死満塁から陽川の二ゴロの間に1点を先制した直後。2死二、三塁。フルカウントからの7球目、真ん中低めに落ちるフォークをすくい上げ、左翼スタンド上段までかっ飛ばした。4月7日以来の1発で、ホーム11連勝中だった九里を一振りで崩した。

待望の1発に金本監督も納得の様子だ。指揮官は「3ランなんて久しぶりじゃない? ホントね。本塁打自体、あまり出ないチームなのでね。先制パンチとしては大きかったですね」と絶賛。打撃技術については「低めの変化球をある程度、泳いで。いい泳ぎ方ですね。重心が残った、いい泳ぎ方ができた」とうなずいた。

守備でも好プレーをみせた。4点リードの8回、今村に代わって代打で登場した小窪が、能見の外角への変化球を引っ張り、打球は三塁へ。左翼線に抜けそうなゴロに飛びついた。すぐさま体勢を整え、一塁へノーバウンド送球。先頭を出せば相手に流れを渡しかねない場面で、体を張ってくい止めた。攻守での活躍に「全部頑張ります」と気合十分だ。

現在打率は2割4分ながら、8月は3割4分3厘、9月に入り、月間打率は4割6分7厘と絶好調だ。シーズン終盤にさしかかり、本来の力を発揮し始めた若手の大砲が、今後の戦いのキーマンとなりそうだ。【古財稜明】