「男」が巨人を3位に返り咲かせた。9回1死、男・長野久義外野手(33)が12号サヨナラ弾で勝負を決めた。今季5戦5敗だったDeNA東をつかまえきれずに無得点のまま最終回まで進むも、男・菅野智之投手(28)が、被安打5で今季7度目の完封で14勝目を飾った。7完封は球団では89年斎藤雅樹投手総合コーチ以来29年ぶり。9日に引退した元BC栃木・村田修一氏のセレモニーが行われた一戦は“男気(おとこぎ)”で価値ある1勝をもぎ取った。

男らしい惜別のサヨナラ弾だった。0-0の9回1死。緊迫した投手戦を長野の一振りが終わらせた。DeNA砂田のフォークをすくい上げた。手応え以上の飛距離で、左中間スタンドへ打球を放り込んだ。迎えたヒーローインタビュー、お立ち台の上から声を張り上げた。「村田さん、見てますかー!」。もう1人の主役に、手を振った。

粋な心遣いがムードを高めた。現役引退した村田氏が来場した。日大の先輩で12年から昨季まで同じユニホームで戦ってきた。第1打席から出ばやしを「Maroon5」の「Sugar」に変更した。「あれ、修さんが使ってたやつです」。NPB復帰がかなわなかった男に代わり、東京ドームに響き渡らせた。

屈辱にまみれても、はい上がる。その姿もそっくりだった。2回無死二、三塁。先制機で浅い右飛に倒れ、無得点に終わった。「決められず、残念なのが強かった」。併殺打の嘆息に包まれても、試合途中の帰宅を命じられても、逃げずに次の機会を辛抱強く待った大先輩のように、凡退しても前を向き、9回の打席で取り返した。

激しいCS争いが繰り広げられる中、0・5差だったDeNAを破って3位に再浮上した。エース菅野にも白星をつけた。試合後、村田氏を「あんなきれいな終わり、ある?」と目を丸くさせ、「律義な長野の思いがボールに乗ったんじゃない? 第1打席から曲を使ってくれたのは気づいてた。最終打席まで使ってくれる優しさがホームランになった」と感嘆させた。

試合後、左翼席から村田氏の横浜時代の応援歌が流れた。「ウルッときました。寂しいですけどね」と、長野の涙腺が緩んだ。誰からも愛された男を送り出したサヨナラ弾。強く、優しく、格好いい男の生きざまを継承する。【島根純】

▼長野が9回にサヨナラ本塁打。巨人のサヨナラ弾は今季138試合目で初。長野のサヨナラ打は14年7月5日中日戦以来5本目で、サヨナラ弾は13年8月29日阪神戦以来5年ぶり3本目。巨人の1-0サヨナラ弾は、16年脇谷以来9度目。