西武が誇るバットマンが、CSファイナルステージ初勝利をもたらした。栗山巧外野手(35)が先制3ランを含む3安打、ポストシーズン史上最多タイの6打点を挙げた。チームも11安打13得点で、初戦で打ち負けたソフトバンクに打ち勝った。アドバンテージの1勝を加え2勝1敗とリード。山賊打線の本領発揮だ。

いきなりの好機も、栗山には想定内だった。初回2死一、二塁で回ってきた。「来た!」と奮い立つ。だが、ネクストバッターズサークルから打席に向かう間に心を静め、頭を整理した。「自分の振れる球、1番から4番までの流れ、映像。そういうことだけ考えた」。カウント3-2でソフトバンク・ミランダの浮いたチェンジアップを強振。ボールは右翼席へ歓声とともに消えた。

準備のかたまりだ。5番DHとして「初回にチャンスで回ってきて準備が出来ていないのが一番嫌」と出番を待った。イメージどおりの展開で、やってのけた。表情を崩さずダイヤモンドを回りながら、内心で喜び、スコアラー陣に感謝した。「完璧。丁寧なデータが割り切りを持たせて打席に立たせてくれる」。はしゃぎ過ぎず、次へ。6回、7回と適時打を重ね計6打点。ポストシーズン史上最多タイと聞き「もう1点いけばうれしかったけど…できすぎです」とおどけた。

準備は9月30日の優勝決定直後から始まっていた。休んでもよかったが、望んで出場。CS前の宮崎・南郷合宿では室内で打ち込んだ。まるでキャンプのようだった。「CSは自分の中では、もう1度、開幕ぐらいの気持ち。今年の成績じゃね」。17年目のベテランが打率2割5分6厘の悔しさをバネにしていた。マシン相手に、けれん味のない打球音を響かせ「毎日が楽しいです。手の皮がむけなければ、いつまでも打っていたい」と真顔で言った。

喜びは一瞬だ。「優勝した僕らが当然、日本シリーズに行くと思っている。明日も、明後日もある」と口元を引き締めた。まずは、あと2勝。その先の最高の喜びまで、打ち続ける。【古川真弥】

▼栗山が6打点。ポストシーズン(PS=プレーオフ、CS、日本シリーズ)1試合6打点は最多タイ(5人目)となった。