愛されたまま、背番号24はグラウンドを去った。今季限りで辞任する巨人高橋監督はCS敗退が決まり、苦汁の思い出しかないマツダスタジアムのレフト付近へ、あいさつへと歩んだ。巨人ファンのみならず、広島ファンからも由伸コールが降り注ぐ。現役時の応援歌を背に、引き揚げた。「去っていく人にありがたい」と微笑を浮かべた。

3日の辞任表明後、4連勝で天敵のV3王者にぶつかった。無形の勢いと「監督と1日でも長く」の思いが重なった。だが完膚なきまでに散った。この日も2回に適時打と内野ゴロの間に効率よく2点を先制され、3回は丸の1発で突き放された。打線は5回まで無安打。3戦連続1得点では勝てない。エース菅野はシーズン終盤のフル回転で第3戦に投入できず、ノーヒットノーラン後の舞台に立つことなく、終演を迎えた。

どこもなし得ていない、勝率5割以下からの日本一“ジャイアンツ・キリング”は道半ばとなった。指揮官は「やっている間は広島にいい戦いができなかった。勝てなかった結果がすべて」と現実を受け止めた。

物語は第1章で終わらないことを誰もが願う。山口オーナーは「高橋由伸は巨人の宝。再びユニホームを監督として着てもらうことを願ってます」と希望する。終戦の瞬間、いつもと同様にメモにペンを走らせ、敗戦を記した。高橋監督は「勝ってないので何とも言えないけど、自分なりには精いっぱいやったつもり。勝つ難しさを感じた? それはそうでしょう。どこも必死に勝とうと思って、やっているわけだから」と言葉を紡いだ。いつか背番号24が帰ってきた時、唯一無二の経験が頂上への礎となる。【広重竜太郎】

◆ジャイアント・キリング giant killing。意味は番狂わせ、大物食い。日刊スポーツ巨人担当ツイッターでアンケートを実施し、借金の3位から日本一を目指すチームのフレーズとして2362票のうち、最多41%の得票で語呂の近いジャイアンツ・キリングが選ばれた。