ソフトバンクが日本シリーズで広島に勝ち通算4勝1敗1分けで、2年連続日本一に輝いた。球団初となる2位からの下克上だった。MVPには日本シリーズ新記録となる6度連続の盗塁阻止で勝利に大きく貢献した甲斐拓也捕手が選ばれた。

広島の主砲鈴木誠也が三塁ゴロに倒れゲームセット。マウンド付近に歓喜を輪ができた。工藤公康監督(55)の体が胴上げで14度宙を舞った。

勝利監督インタビューで工藤監督は感無量の様子だった。

「選手達がシーズン終盤から休むことなく、満身創いの中で突っ走ってくれたおかげで日本一になれたことを幸せに思う。本当にありがとう。(2位からの日本一は球団初快挙)僕は初めてだけど、2位という悔しい思いをして頑張ろうと、そういう思いが日本一になれたのではないかと思っている。(1、2戦勝ちなしから本拠地で3連勝)福岡にいる皆さんの後押しで本来の形ができて3連勝できた。(4勝1敗1分け)本当に広島さんは強くて、どこで復調するか、逆転されるかと僕の心臓はドキドキして見ていた。お互いに切磋琢磨してわずかの差で僕らが勝てたと思う。(短期決戦の戦い方について)僕だけじゃなく投手コーチと何度も何度も話をして第2先発を作ったほうがいいのではないかとか、アドバイスをもらって、いろんなアイデアをいただいたことがここにつながったと思う。僕は日本一幸せな人間です。選手のみんなありがとう」と叫んだ。

工藤監督は、負ければ敗退のCSファーストステージ、3位日本ハムとの第3戦が「心臓の音が聞こえるくらいドキドキした」という。試合前のシートノックを眺めながら「今日で今年は終わるのかも」とも覚悟した。

CS、日本シリーズでは先発は5回まで持たせず早めの継投が多かった。不振の松田宣浩を外し、三塁にグラシアルを入れるなど、打線も日替わりオーダーだった。

「短期決戦の戦い方。選手には申し訳ない気持ちでいるし、本来は使って、信じて使って負けたらしょうがないじゃないかと、そこまで自分の中でも考えたが、それでもやっぱりみんなが笑って終われるようにしないといけない。それが僕の責任」(工藤監督)。

心を鬼に、選手のプライドより、チームの勝利を最優先した。この日、4回の先制点も6番の内川主将に犠打を命じ、高校野球ばりに西田のスクイズで点をもぎ取った。

選手で11度、監督で2年連続3度目の日本一。選手、監督で最多となる14度の頂点を知る工藤監督は、短期決戦での先制点の重みが相手に多大な重圧となることを一番分かっていた。

秋山前監督からバトンを託され、2015年から4年間で3度の日本一。常勝軍団へと導いた工藤監督が、最後は選手たちを笑顔に変えた。